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導入事例紹介

普及が進む大板用
ファイバーレーザ加工機
~ 鋼材販売にも回復の兆し ~

鋼材価格高騰で生産合理化が進む

鋼材の卸販売を行う厚板シャーリング業界は、建設・土木・建設機械・産業機械・工作機械・輸送機械など、様々な分野の切板に対応しています。

最近は製品の高品質化、多品種小ロット化、短納期化、働き方改革による工数不足、人手不足などに対応するため、原価低減に向けた取り組みが必要となっています。さらに、鋼材価格が大幅に上昇する中、材料の歩留り率向上によるコスト低減努力が求められています。

全国厚板シヤリング工業組合が毎月発表する鋼板流通調査によると、鋼材出荷量は2019年から下降線となっていましたが、2021年は前年を上回り、上昇傾向に転換しています。

毎月の出荷量を見ると、2022年1~3月は上向きで推移してきましたが、4月は若干の落ち込みがみられました。また、鋼材価格高騰に対応するため在庫量が上昇しています。しかし、足もとの需要は好調で、不確実性はあるものの先行きに期待する声が強くなっています。

鋼材出荷量の月次推移 鋼材出荷量の月次推移 鋼材出荷量の月次推移

※出典:『全国厚板シヤリング工業組合/鋼板流通調査Ver5』

溶断加工にレーザ加工が加わる

厚板シャーリング業界の切板加工は、「シャーリング切断」と「溶断」に大別されます。
「溶断」の加工方法には、熱源によってガス切断・プラズマ切断・レーザ切断があり、機械化・システム化が進んでいます。

鋼材切断には、25年ほど前からCO2レーザ加工機が盛んに使われており、さらにレーザ発振器の高出力化に伴い、加工できる板厚の範囲は16mm、19mm、22mm、25mmと広がっています。このレーザ切断は、ガス切断やプラズマ切断に比べて加工スピードが速く、切断面品質も優れていることから導入が急増しました。

鋼材切断に用いられる高出力レーザ加工機の切断性能は、今では極薄板から40mm程度までの極厚板までカバーしています。自走式の場合、レーザ発振器本体が移動しながら加工するため、テーブル長さは最大80mまで対応でき、8′×20′材を何枚も積載することができます。

ファイバーレーザ加工機導入が
急速に進む

数年前から、CO2レーザに替わって、ファイバーレーザ発振器を搭載した大板用のレーザ加工機が市場に投入されるようになりました。

省エネが求められる今の時代、プラズマ切断やCO2レーザ切断は大量の電気を消費するため、消費電力を大きく削減できるファイバーレーザが注目され始めました。

ファイバーレーザ加工機が市場に紹介された当時は、20mmを超えるような板厚については、CO2レーザならではのなめらかな切断面が好まれていました。しかしその後、ファイバーレーザの高出力化と制御技術の進歩により、切断面品質が大幅に改善し、単位時間あたりの加工重量も向上したことで、急速に普及し始めました。

ファイバーレーザ加工サンプル SS400 25t

ファイバーレーザ加工サンプル
SS400 25t

6、9、12kW発振器を搭載している
大板加工用ファイバーレーザ加工機

アマダは、独自のビーム制御技術「ENSISテクノロジー」を搭載したファイバーレーザ加工機「ENSIS-AJシリーズ」に、8′×20′サイズの大板材をワンパスで加工できる「ENSIS-6225AJ」を追加、厚板シャーリング業界の注目が集まっています。

「ENSIS-AJシリーズ」は、ビーム可変ユニットにより材質・板厚に応じて最適なビーム形状をつくり出し、高品質な加工を実現しています。また、オートコリメーション機構を搭載し、切断するビーム径と焦点位置を最適制御することができます。さらに、軟鋼・酸素カットでは酸素ガスの材料内への侵入を容易にするためにカーフ幅(切断幅)を広くし、ピアシング時には瞬時に貫通させるためにエネルギー密度の高い焦点を形成することができます。

薄板

薄板

中厚板

中厚板

厚板

厚板

オートコリメーション機構イメージ

機械構造はフライングオプティクス方式を採用することで、軸移動速度・加減速度のいずれも飛躍的に向上させました。従来の自走方式と比較し、同じ加工指令速度でも加工時間を大幅に短縮でき、さらに高精度な位置決めを維持することができます。

また、厚板加工における切断不良の大きな要因についても、母材の温度上昇を抑制する「WACSⅡ」によって、安定加工を実現しました。「WACSⅡ」は、レーザビームの周りを囲むように水を噴霧することで母材を冷却、蓄熱量を低減することができます。また、桟幅を最小化でき、歩留り向上にも貢献します。

マーキング機能で加工後の
仕分け作業が楽になる

厚板シャーリング業界の現場では、製品回収の際に加工機を停止し、粉塵が舞う加工テーブル上で人海戦術による作業を余儀なくされていました。

「ENSIS-6225AJ」は、加工テーブルをフルパーテーションで全てカバーするとともに集塵を行うことで、クリーンな作業環境を提供し、さらに、材料段取り・製品回収の作業を外段取り化することで、安全性を確保することができます。レーザ加工を止めることなくパラレル作業が可能となり、ダウンタイムを極限まで削減できます。

さらに、オプションの「セカンドステーション」と「インクジェットプリンター」(以下 IJP) を搭載することで、加工後はセカンドステーションに加工済み鋼材を搬出し、IJPにより製番・注番などをマーキングすることで、仕分け作業が大幅に軽減します。

以下、「ENSIS-6225AJ」を導入されたお客さまの事例を紹介します。

国内初に12kW仕様を導入
— 最大32mmの厚板を切断

(株)誠和商会(本社:広島県広島市、島根工場:島根県江津市、西本寛史社長)は、建材製品・鋼構造物・鉄骨構造・階段用踏み板などの切断から曲げ、開先、穴あけ、ショットブラストまでの鋼板加工に対応しています。

4月の実績で見ると、生産数量は12万個以上、約1000トンで、1日あたり5000~6000個を加工し、出荷しています。材料はSS400、SM材、SN材が中心で、板厚は0.8~160mmに対応しています。

従来は25mmまでをレーザ加工、25~160mmをガス切断で加工していました。2004年に自走式のCO2レーザ加工機(6kW)を本社工場・島根工場に導入し、業界に先駆けて板厚25mmまでのレーザ加工に対応するようになりました。その後、2台のレーザ加工機導入の後、2017年には初めてのファイバーレーザ加工機「ENSIS-3015AJ(3kW)+AS-3015G」を15段のパレットチェンジャー付きで導入しました。

西本寛史社長

西本寛史社長

2022年1月には最新のファイバーレーザ加工機「ENSIS-6225AJ」(12kW)を、8段パレットチェンジャー、セカンドステーション、IJP付きで導入し、加工を止めずに材料の搬入・製品搬出までを自動で行えるようになり、長時間連続運転を実現しました。12kW発振器を搭載することで、SS400であれば板厚32mmまで加工でき、今後は加工範囲拡大による加工重量アップにも貢献できると考えています。また、材料費の高騰により材料歩留りの改善も課題と考え、AIネスティングソフトを新たに導入、運用しています。

島根工場に導入された「ENSIS-6225AJ(12kW)+AS-6225」

島根工場に導入された
「ENSIS-6225AJ(12kW)+AS-6225」

BIMに対応して
ダイバーシティー経営で成長

近藤鋼材(株)(本社:静岡県沼津市、近藤千秋社長)を中核とする近藤鋼材グループは、鋼材の卸売りだけでなく、加工販売や工事関連にも事業を展開。3次元CADを駆使し、「ビルディング・インフォメーション・モデリング」(以下 BIM)と呼ばれる建設模型を作成して、原設計図から工場工作用図面を作成しています。毎月の鋼材販売量は5000トン。得意先の数は1000社を超え、社員数はグループ全体で330名となっています。

3次元CADを使い、BIMを活用することで、加工の源流工程が大幅に合理化されました。次のテーマは、BIMで作成されたモデリングデータから鋼材加工用のCAMを作成して、CAD/CAM一貫生産を実現することです。

近藤千秋社長

近藤千秋社長

鉄骨ファブの梁製作では、グループ会社がBIMに対応した溶接組立までの全自動工場を7月に完成し、月間最大2000トンの梁製作を実現しました。その後は梁の組み立てに使われるスプライスプレート、ガセットプレートなどの加工現場の改革が課題となっています。

そこで2018年、グループ会社の沼津シャーリング長岡工場(静岡県伊豆の国市)と近藤総業の平塚工場に、板厚最大28mmまでの 8′×20′材に対応できるCO2レーザ加工機「LC-6030θⅢ」(6kW)を8段パレットチェンジャー付きで導入しました。

2022年1月には、近藤鋼材の静岡営業所(静岡県静岡市)に「ENSIS-6225AJ+AS6225+セカンドステーション+IJP」を導入。これによって静岡県西部の得意先にも充実したサービスを提供できるようになりました。

「ENSIS-6225AJ」は、材料段取り・製品回収の作業を外段取り化することにより、作業者の安全が担保されるとともに、レーザ加工を止めずに製品回収などの作業をパラレルで行えるため、ダウンタイムを大幅に削減できました。セカンドステーションにはIJPを搭載し、自動マーキングが可能になり、加工後の仕分け・梱包の作業時間が大幅に短縮されました。22mm、25mmといった厚板の8′×20′材を加工できるため、ロットが大きい仕事が入ると稼働率がぐっと上がります。加工機を止めないようにすることで加工できる絶対量を増やし、月産200トンの大台が目の前に近づいています。

静岡営業所に導入された「ENSIS-6225AJ(9kW)+AS6225」

静岡営業所に導入された
「ENSIS-6225AJ(9kW)+AS6225」

さらに、6月には沼津シャーリング長岡工場に鉄骨・鋼材加工向けファイバーレーザ加工機「LC-VALSTER-6225AJ」(10kW)を新たに導入。H鋼・コラムなどの鉄骨ファブの加工から、組み立てに必要なガセットプレート、スプライスプレート、ファブデッキなどの部材加工をワンストップで行える生産体制を着々と構築しています。

沼津シャーリングに導入された「LC-VALSTER-6225AJ」(10kW)

沼津シャーリングに導入された
「LC-VALSTER-6225AJ」(10kW)

建築鉄骨向け切板の
“フル加工”に対応

建築用部材の加工や販売などを手がける(株)山村(群馬支店:群馬県伊勢崎市、山村春美社長)は、送電線の鉄塔、橋梁などのインフラ関連のニーズ拡大にともない、月間加工量が2000トンあまりに増えました。今後も業務量の増加を見込み、2021年には群馬支店近くの敷地に第4工場を増設。平板開先加工機やオートボーラー、ショットブラストなどの2次加工設備を集約し、群馬支店で加工したスプライスプレートやガセットプレートの2次加工に特化した工場を稼働させました。

2022年2月に8′×20′材に対応できる「ENSIS-6225AJ」を10段パレットチェンジャー、セカンドステーション、IJP付きで導入。ENSIS単独で3月には加工重量366トンと早期立ち上げを実現しました。
全体の月間加工重量のピークは2021年末の1960トンでしたが、今年度中には月間2200トン達成も視野に入っています。

山村春美社長

山村春美社長

同社は切板だけでなくH形鋼・形鋼・鋼管・冷延鋼板・熱延鋼板・亜鉛メッキ鋼板の穴あけ・曲げ・開先・ショットブラストといった2次加工まで手がけることで、「建築鉄骨向け切板の“フル加工”」と「最短納期での対応」を特徴として打ち出し、顧客のニーズに応えています。

鉄骨ファブ業界では、鉄骨部材の継ぎ手に取り付ける添え板と呼ばれているスプライスプレートが必要で、継ぎ手は高張力ボルト接合か溶接により一体化されます。プレートの板厚は鉄骨部材によって様々ですが、9mm、12mm、16mm、19mm、25mmが大半。同社では導入した「ENSIS-6225AJ」で9mm、12mmのプレートを中心に加工することで、加工重量を増やすことを計画しています。

従来のレーザ加工機は板厚が厚くなると加工スピードが落ちるのが難点でしたが、「ENSIS-AJ」は加工速度が速いのが魅力でした。「ENSIS-AJ」の導入で加工速度が向上し、10段パレットチェンジャーに収納した6mm、9mm、12mmの加工が朝方には終了します。8′×20′材でも 6mm材なら 40分で終了します。

2022年2月に導入されたENSIS-6225AJ(9kW)+AS6225

2022年2月に導入された
ENSIS-6225AJ(9kW)+AS6225

昨年末から粗鋼生産量は4カ月連続して前年同期を下回っており、鋼材価格の上昇など、業界を取り巻く状況は楽観できません。しかし、大手ゼネコンが受注している工事量は相当量あるため、こうした仕事の受注獲得へ向け、積極経営を進めています。

川下の工程の取り込みも進む

鋼材流通業界の間では、鋼材販売に留まらず、川下の工程までを取り込むとする傾向が顕著になっています。特に鋼材流通大手の小野建株式会社は、西日本の営業拠点を中心にファイバーレーザ加工機を7月までに17台導入するとともに、一部の拠点にはベンディングロボットも導入し、川下の工程を取り込むことによる付加価値改善を目指しています。

これをきっかけに鋼材商社、厚板シャーリング業者が競って大板対応のファイバーレーザ加工機導入を進め始めています。鋼材加工用のファイバーレーザ加工機導入の機運はしばらく続きそうです。

記事:マシニスト出版