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導入事例紹介

簡易板取り機能で
材料のムダを削減
~ コンパクトファイバーレーザ
「BREVIS-AJ」 ~

ファイバーレーザマシンが主力に

板金加工業界でレーザ加工技術が取り上げられて40年余りが経過しました。発振器は当初CO2レーザが使用され、板金加工用レーザマシンとして市場に投入されてきました。CO2レーザマシンの普及は、現在国内で3万台以上が出荷されており、CO2レーザ発振器およびその加工技術は、すでに成熟期を迎えているといえます。

そして10年ほど前からは、ファイバーレーザマシンが市場に投入されるようになり、現在では出荷台数においても圧倒的にファイバーレーザマシンが主力になっています。特に地球温暖化対策を図るうえで、消費電力量がCO2レーザ発振器に比べて1/3と省エネ効果の高いファイバーレーザ発振器に対する関心が高まっています。ファイバーレーザの特長は高い電気・光変換効率、高ビーム品質、長寿命である点に加え、高ビーム品質であるがゆえに従来のCO2レーザよりも小さなスポットに集光できると同時に、短波長であるため、金属材料に対して高い吸収特性があり、薄板材の高速切断や、アルミ・銅などの高反射材加工にも対応できる優れたメリットを有しています。

高い加工能力を備えた
コンパクトマシン

10年ほど前から国内に市場投入されてきたファイバーレーザマシンの出荷台数は5千台以上となっています。しかし、これまでのファイバーレーザマシンは5′×10′サイズを中心に、4×2m対応、6×2.5m対応と、大板加工へのニーズに対応しながら、素材搬入から製品搬出までの自動化システムを充実させてきました。その一方で、加工機の設置スペースに限りがある都市部のアーバン工場では、大型化している最新のマシンの導入が難しくなっていました。そうした中で昨年春、コンパクトファイバーレーザマシン「BREVIS-1212AJ」が発表されました。

機械サイズは従来の小型CO2レーザマシン「LC-1212α」シリーズと同等のコンパクトな機械サイズを維持しながら、出力3kWのファイバーレーザ発振器を搭載することで、少ない設置面積で高い加工能力を実現しています。加工できる板厚は、軟鋼・ステンレス・アルミが最大12mm、銅が6mm、真鍮が8mmとなっています。200mmのZ軸ストロークを生かし、箱物形状やアングル、チャンネルといった形鋼の加工も可能で、加工領域の大幅な拡大を実現しています。

さらに、パンチング加工との複合加工を可能とする、カメラを用いた加工原点位置を補正する「OVS」機能や、パイプ加工に対応する「チャックインデックス」もオプションで選択できるようになっており、多様なニーズに対応することができます。

「BREVIS-1212AJ」

「BREVIS-1212AJ」

さらに、端材を活用した加工に対応できるように「BREVIS-AJ」に搭載されている「i-CAS」(i-Camera Assisted System)は、機内のカメラで端材を撮影、NC画面上にその状態を表示。端材の余った部分にパーツデータをドラッグ&ドロップするだけで、加工プログラムを作成することができ(オプション仕様)、直感的な操作で製品の配置が行え、歩留りが向上し、材料のムダを省き、材料歩留まりを改善することもできます。

以下に、「BREVIS-AJ」を導入されているお客さまの事例を紹介します。

カメラによる簡易板取り機能「i-CAS」

カメラによる簡易板取り機能「i-CAS」

待ちに待った完成度の高い
ファイバーレーザマシン

(有)伊藤精工所(愛媛県新居浜市、伊藤公一会長、東野耕作社長)は1973年の創業当初は一般製缶加工に始まり、立体駐車場や半導体製造装置向けの部品加工の仕事をしながら仕事を拡大。1990年に導入事例が少なかったレーザマシンを導入して以降は、徐々に板金加工に移行しました。現在の取引口座数は60社以上、そのうち県外の割合は50%以上。2006年には本社工場横の社有地に第2工場を建設、半導体製造装置部門を分離。2018年には当時工場長だった東野耕作氏が代表取締役社長に就任、伊藤公一代表取締役会長との二人三脚体制になっています。

東野耕作社長

東野耕作社長

伊藤公一会長

伊藤公一会長

同社のロゴマークは『Beam on』。ビームには2つの意味があり、1つ目は『光』、つまりレーザビームのことで、それが常にオン(仕事があること)の状態でありたいということを意味しています。

そして2つ目は『梁』を意味しています。建物は柱と柱をつなぐ梁がなければ建っていられません。小さい会社であっても柱をつなぐ梁のような存在を目指したいとの思いで決めたということで、お客さまから必要とされる会社であり続けたいという思いが込められています。

半導体製造装置の仕事がメイン

受注する仕事は半導体製造に欠かせない「イオン注入装置」のウエートが高いのが現状です。
この「イオン注入装置」は、帯電した原子や分子(イオン)をウエハーに高速で打ち込む装置で、ウエハーに半導体としての電気的特性を与えるために不可欠な装置といわれています。

世界的な半導体不足の中、同社への発注は右肩上がりとなっています。そのほかには食品加工装置の自動機メーカーや、設備材関連の自動機メーカーからの仕事などで、いずれも増加傾向になっており、2018年以降の業績は好調を維持しています。

以前は他社製のレーザマシンが導入されていましたが2011年にパンチ・レーザ複合マシン「LC-2012C1NT」、2014年にシャトルテーブル「LST-3015F1」+マニプレーター「MPL-3015S」付きのファイバーレーザマシン「FLC-3015AJ」(2kW)、2017年にはCO2レーザマシン「LCG-3015」(3.5W)+「LST-3015G」を導入しています。

ブランク工程ではレーザマシンがシート加工した際に発生する端材の活用が課題となっていました。受注する製品は多品種少量で、板厚は0.5mmから3.2mmが多く、4.5、6.0、9.0、12.0mmにも対応されています。納期は1週間が平均ですが、即納の依頼が入ると、納期順にシート加工すると歩留りが悪くなり、端材が数多く発生します。

これまでは、レーザマシンの作業者が端材を材質・板厚別に管理して、必要なときに手差しでテーブルに載せて端材の寸法を測定し、そこから切り出せる製品を割り付けて加工を行っていました。

5′×10′材が載せられるテーブルに、手のひらサイズの製品1個を加工するためだけに端材を段取りして加工するのはムダが多く、以前から端材を活用できる、コンパクトで手軽に使えるレーザマシンがほしいと思っておられました。
そこで、端材活用を第一に「BREVIS-AJ」を検討されました。

端材活用ができる
「BREVIS-AJ」に着目

伊藤会長と東野社長は2021年10月初旬にアマダ・関西テクニカルセンターで実機を見学されました。

伊藤会長はその時の印象を次のように語っています。
「『BREVIS-AJ』はコンパクトな機械サイズでありながら、出力3kWのファイバーレーザ発振器を搭載し、高い加工能力を備えていました。加工できる板厚は軟鋼・ステンレス・アルミが最大12mm、銅が6mm、真鍮が8mmと従来のCO2レーザマシンでは加工できなかった高反射材の加工にも対応できます」。

「そして、『BREVIS-AJ』に搭載されている簡易板取り機能『i-CAS』は機内のカメラで端材を撮影し、「AMNC 3i」の画面上にその状態を表示、端材にパーツデータをドラッグ&ドロップするだけで、加工プログラムを作成できます。直感的な操作で板取りができるので、歩留りが向上し、材料のムダを省くことができると思いました。

また、Z軸ストロークが200mmあるので曲げ加工後のフランジ高さがある製品の追加工や、箱物形状、アングル・チャンネルといった形鋼の加工にも対応できることがわかり、加工領域も拡大できるので、当社が待ち望んでいたレーザマシンがようやくできたと思いました」。

簡易板取り機能を搭載した「AMNC 3i」

簡易板取り機能を搭載した「AMNC 3i」

実機見学から1カ月で導入

帰路の車中で伊藤会長と東野社長は相談の上で導入を即決、11月に導入されました。
現在同社が月間に受注する製品アイテム数は約4000アイテムですが、そのうちの90%が新規品や設計変更品。そのため、1日あたり150~200件のプログラムを作成する必要があり、4名のプログラマーが作成作業を行っています。「BREVIS-AJ」は端材活用を前提にしており、マシンのそばには「LC-C1NT」「FLC-AJ」「LCG」で発生した端材が材質・板厚別に分けて管理されています。

これまでの「FLC-AJ」は発振器が2kWということもあって、板厚3mmを超えるステンレスやアルミを加工すると切断面にドロスが付着して、加工後の処理が大変でした。しかし、「BREVIS-AJ」は発振器が3kWのため、3.2mmはもとより、それ以上の中板、厚板を加工してもドロスで後処理の手間が増えることはなく、湿式バリ取り機「IBT」を1回とおせば大抵は処理できる品質を保っています。

切断面のベベル角の問題も発生しておらず、東野社長は「オールラウンドに活躍できるマシン」という印象をもっています。また、伊藤会長は30年以上、レーザ加工に携わってきた経験から「導入からの立ち上がり、機械の操作性、加工範囲、加工スピードのいずれをとっても完成度の高いマシン」と話しておられました。

「BREVIS」端材活用

「BREVIS」端材活用

少子高齢化、労働力人口の低下に伴い、日本経済の収縮が懸念されています。そうした中で中小企業の経営環境も、コロナ禍の影響や原油・原材料価格の高騰などによって、厳しい状況となっています。加えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGs—環境問題への対応も喫緊の課題となっています。こうした中で同社が社会経済の劇的な変化への対応力を備えていくためにも「BREVIS-AJ」の導入は大きな効果をもたらしているといえます。

記事:マシニスト出版

容易な端材活用により材料のムダを省く

「BREVIS-AJ」の
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