「都市型板金工場」で採用が進む
「コンパクトファイバーレーザマシン」
「都市型板金工場」の
「初めてのレーザマシン」
「都市型板金工場」を中心に、「初めてのレーザマシン」としてコンパクトファイバーレーザマシン「BREVIS-AJ」を導入する事例が増えています。
一般的に「都市型板金工場」は比較的小規模で、工場スペースと投資コストに制約がある事業者が多い傾向にあります。主な生産品は量産よりも試作や小ロット生産が中心で、幅広い材質・板厚、特急・即日納品への対応が求められます。
このような生産特性から、金型が不要で自由形状に対応できる小型のレーザマシンを設備している企業も少なくありません。しかし、レーザ加工が“主力工程”とまではいえない企業の場合は、近隣の協力工場にレーザ加工を依頼するのが一般的な対応でした。
ただし、外注への依存度が高いと品質管理や特急対応が難しくなり、レーザ加工がネックとなって品質トラブルや納期遅延を引き起こすことも珍しくありません。レーザマシンを保有していない「都市型板金工場」の多くは、「品質保証・コスト低減・納期遵守のためにレーザ加工を内製化したいが、工場スペース・加工性能・生産ボリューム・導入コストなどの兼ね合いから、新規導入までは踏み切れない」というジレンマを抱えている状態でした。
コンパクトでありながらオールラウンドな加工性能を備えた「BREVIS-AJ」は、こうした「都市型板金工場」のニーズにマッチし、各種補助金の効果も手伝って着実に普及しています。ここからは「初めてのレーザマシン」として「BREVIS-AJ」を導入した「都市型板金工場」の事例を紹介していきます。
内製化により特殊材料や
超短納期にも柔軟に対応
船橋金属(株)(東京都江戸川区、船橋譲一社長)は2023年1月、同社初のレーザマシンとして「BREVIS-1212AJ」をチャックインデックス仕様で導入しました。
同社は創業10年・総勢4名の小規模な板金加工企業です。「頼まれれば何でもトライする」(船橋社長)というお客さまに寄り添うスタンスで、業種・得意先を問わず多種多様な仕事を手がけ、即日納品を求められることも少なくありません。
マシン上部の中2階に「BREVIS-AJ」の付帯設備を設置し、設置スペースを工夫
得意先は約20社で、半導体製造装置関連、医療・理化学関連、建築金物、食品工場設備など、様々な仕事が日々舞い込んできます。加工材料は、鉄系材料が20~30%で、ステンレスとアルミの使用量が同程度。銅・真鍮・チタン・ニッケル・インコネル・ハステロイといった特殊材料も頻繁に加工しています。板厚は0.1mmから12mmまでと幅広く、社内には常に20種類以上の材料を0.1~5.0mmの板厚ごとに数枚ずつストックし、常に特急のオーダーに備えています。
半導体製造装置関連の部品。左はハステロイ、右はステンレス
リピート率は約50%で、物件対応の建築金物や食品工場設備をはじめ一品一様の製品も多くあります。ロットサイズは1個から1000個以上までと様々で、典型的な変種変量生産体制となっています。
「以前は注文が入るたびに協力工場へレーザ加工の手配をかけ、加工が終わるまで待ち、できたら引き取りにいくというパターンの繰り返しでした。当社は特急の仕事が多く、朝に受注して午後一番で引き取りというケースも日常茶飯事です。こういう急ぎの仕事のときは、レーザ加工が早く終わらないかといつもやきもきしていました」と船橋社長は振り返ります。
船橋譲一社長
このような外注体制の改善のため、「BREVIS-AJ」を導入し、協力会社に頼っていたレーザ加工を内製化。特殊材料の加工や超短納期にも柔軟に対応できるようになり、さらに外注費が減ったことで利益率も改善しました。
船橋社長は「材料さえあれば、すぐに自社内で対応できる体制が整いました。それまで感じていた手待ちのストレスはすっかりなくなり、精神的にも楽になりました。結果的に外注費が減り、利益率も改善しました。近隣の加工企業から『レーザ加工ができるなら、この製品も頼みたい』と新たな仕事をいただくケースも増えています。チャックインデックス仕様を選択したため、今後はΦ19~180mmの丸パイプのレーザ加工も社内に取り込んでいく方針です」と評価しています。
自社で簡易板取り機能「i-CAS」で端材に部品を割り付ける様子
「金属屋根製品」のボトルネックを解消
(株)土筆鋼業(東京都江戸川区、中村淳一社長)は2022年11月、「BREVIS-1212AJ」を4´×8´リポジショニング仕様で導入しました。同社にとって初のレーザマシンであり、主力である「金属屋根製品」の周辺で使用する「付帯部品」などの加工に活用しています。
同社の得意先は建材メーカー、建材商社、住宅・リフォームの工事業者、金物店向け卸業者など約100社。主力の「金属屋根製品」は物件対応になるため、ほぼすべてが新規品です。手がける物件は屋根面積1000㎡前後が標準的で、そこに取り付けられる「金属屋根製品」は50~100枚、「付帯部品」は200~300個、多いときには1000個を超えることもあります。
マシン上部の中2階に、チラー、コンプレッサーなどを設置している
納期はわずか1~3日。建築現場の職人は「金属屋根製品」一式が届くまで屋根工事を進められないため、同社には1日でも早く現地に製品を引き渡すことが求められます。
「BREVIS-AJ」は、主に「付帯部品」の加工を想定して導入しました。「金属屋根製品」はシャーリングとパンチングで対応できますが、取付金具などの「付帯部品」は自由形状が多く、レーザ加工が必要でした。以前は近隣の協力工場にレーザ加工を依頼していましたが、納期管理が難しく、1~3日の超短納期に対応するうえではボトルネックになっていました。
「BREVIS-AJ」の導入後は、当初の思惑どおり「付帯部品」のレーザ加工を内製化することができ、ほぼすべての工程を社内で対応できる体制が整いました。内製化により柔軟な対応が可能になり、納期遵守・納期短縮を実現することができました。
簡易板取り機能「i-CAS」の効果も絶大でした。「金属屋根製品」は先頭工程のシャーリングで所要寸法に切断するため、端材が多く発生します。「BREVIS-AJ」を導入してからは、こうした端材を「付帯部品」の加工に有効活用できるようになりました。
SPCC・板厚4.5mmの切断面。得意先の加工品質の評価も良好
中村社長は「お客さまの希望納期どおりに対応できるようになり、とても喜ばれています。山のようにあった端材はまたたく間に処理できました。材料費が高騰している状況では、材料ロスの削減は非常に大きなメリットです。4´×8´リポジショニング仕様を選択したため、4´×8´の定尺材をそのまま加工することもできますが、実際には端材から加工するケースが80%以上を占めています」。
「社内にレーザマシンを設備したことで、ホゾ・ミゾによる位置決め提案などの試行錯誤やサンプルづくりもできるようになりました。せっかくレーザマシンを手に入れたのですから、今後はレーザ加工を生かした新しい事業展開も考えていきたいと思います」と意欲を示しています。
中村淳一社長
トライプレス用のブランク材の
加工に活用
最後に紹介するのは板金加工企業ではなく、金型製作企業での導入事例です。
丸正精工(株)(愛知県名古屋市、今吉智彦社長)は2022年1月、「BREVIS-1212AJ」を導入しました。プレス金型製作のプロフェッショナル企業である同社にとって、「BREVIS-AJ」は初めて導入するレーザマシンで、300トンクラスのプレス加工に使用する順送金型の試し打ち用のブランク材、金型調整部品、補修部品などの加工に活用しています。
同社が製作する順送金型は、主に自動車のシート関連を含む車体構造部品のプレス加工に用いられます。新型は3次元CADによる金型設計~加工シミュレーション~金型加工~組立~試し打ち~調整~試し打ちという工程を経て製作され、社内には試し打ち用の200トントライプレスを設備しています。
200トントライプレスの横に設置された「BREVIS-1212AJ」こちらも中2階を活用
試し打ちの際は、加工製品のサイズに適したブランク材を用意します。試し打ち用のブランク材は材質・板厚をそろえる必要があり、これまでは外部のレーザジョブショップなどに加工を依頼していましたが、加工単価や納期は必ずしも同社が満足できるものではありませんでした。
そこで同社は「自動車の電動化に対応する金型設備の導入」のテーマで「事業再構築補助金」に申請し、金型加工設備として超精密ワイヤ放電加工機と超高精度超精密平面研削盤、トライプレス用のブランク材の加工設備として「BREVIS-AJ」を導入しました。
自動車の電動化によって搭載するバッテリー重量が増えると、車体構造部品も今まで以上に軽量化が重要になります。剛性確保と軽量化を両立させるためには高張力鋼の活用がますます強く求められ、高張力鋼の高精度・安定加工に対応した金型加工設備も増強する必要がありました。
「BREVIS-AJ」は、コンパクトでありながらSS・SUS・ALの板厚12mmまで、薄板は0.1mmの箔のような材料も加工できるワイドレンジでオールラウンドな加工能力が特長です。導入後はSPCC・SECC・SPHCや銅、780MPa級の高張力鋼などを加工しました。板厚は0.5~2.3mmが中心ですが、0.1mmのシムや10mmのSS材を加工した実績もあります。
2方向を開閉でき、材料の載せ降ろしがしやすい構造
高井篤史専務は「汎用性の高い4´×4´サイズの『BREVIS-AJ』は設置スペースが小さく、当社のような都市型の工場には最適でした。担当オペレーター3名のうち2名は女性ですが、4´×4´サイズの材料であればひとりで段取りができます。銅・真鍮・アルミ・溶融亜鉛めっき鋼板などの薄板から厚板まで幅広く加工でき、Z軸ストローク200mmによって立体物への追加工もしやすく、まさに『便利な道具』という印象です」と語っています。
一番左が高井篤史専務、オペレーターは女性社員も担当
「BREVIS-AJ」は小規模事業者の
強力な武器に
ここで紹介した3社はすべて、「初めてのレーザマシン」として「BREVIS-AJ」を導入しています。
レーザ加工を内製化したことによって特急案件や超短納期案件への対応力を高め、社内でトライや試作ができるようになったことで、顧客への提案力向上にもつながっています。レーザ加工は必ずしも“主力工程”ではないため、稼働率はそれほど重視せず、「レーザで加工したいときにそこにあることが重要」という考えも共通しています。
これまでレーザマシンを保有していなかった企業で採用が進んでいることは、レーザ加工技術の裾野の広がりを感じさせます。コンパクトなオールラウンドマシンである「BREVIS-AJ」は、「都市型板金工場」をはじめとする小規模事業者にとって強力な武器になりそうです。(以上)
記事:マシニスト出版
コンパクトで強力な武器となるレーザマシン
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