1. トップ
  2. コラム
  3. 導入事例紹介
  4. 「つながる価値・つながる安心」で支えるIoTサポート

導入事例紹介

「つながる価値・つながる安心」で支えるIoTサポート
― 国内外で8200台のアマダマシンとつながる ―

img

(有)早野研工(岐阜県大垣市)

アマダは2018年から、通信ゲートウェイ「V-factory Connecting Box(VCBox)」を用いたIoTソリューション「V-factory」を提供しています。

「V-factory」は、マシンの稼働状況や生産実績、稼働実績、材料の使用量、稼働状態などを見える化する「My V-factory」と、IoTを活用した遠隔による「IoTサポート」から成り立っています。これまでに、国内外のお客さま工場で稼働する8200台のマシンがアマダとつながることで、機械の健康状態を診断し、突然起こる機械の稼働停止のリスクを未然に防いでいます。現在、アマダが販売している主要なマシンには、つながる「VCBox」が標準で搭載されており、お客さまが希望すれば利用できる仕組みになっています。

予防保全を実現する
「IoTサポート」の概要

「IoTサポート」はお客さまのマシンとアマダの「IoTサポートセンター」がセキュアな通信環境でつながっています。異常を検知するとアマダ側から能動的に対応するため、お客さまには「つながっているという安心感」が生まれます。同センターの営業時間は、IoTで取得したマシンの稼働状況を分析したうえで、7~21時となっています。

「IoTサポート」を活用することで得られる「3つの価値」をご紹介します。

■1つ目:「安定稼働を支える
安心サポート」

マシンが突然停止すると、生産に大きな影響が出ます。マシンの復旧までには、生産計画の変更や工程の組み替え、オペレーターのシフト変更など、様々な調整が発生し、多くの工数が費やされます。さらに現場では、計画変更に伴い、金型交換などの多くの段取り替えが発生することで納期遅れが発生します。納期の遅れは企業の信頼を大きく損なう原因となるため、可能な限り早期に機械を復旧することが求められます。

「IoTサポート」では、マシンからリモートで取得したデータに基づき、お客さまへ予防保全を提案します。マシンの稼働状態をリモートで取得、自動分析し、部品などの劣化状態を検知することができます。そのため、マシンが停止する前に消耗部品の交換計画を事前に立てることが可能となり、突然のマシントラブルというリスクを回避することが可能となります。

■2つ目:「安定した計画生産を支える
課題解決サポート」

マシンが停止する際のアラームには、様々な種類があります。例えば、定期保守の不備によるものや、部品劣化が原因のアラームなどがありますが、これら以外にマシンの損傷の回避やプログラムのミスなど、トラブルの未然防止のために発生するアラームがあります。未然防止を目的としたアラームの場合、サービスエンジニアの派遣や修理は必要なく、マシンの運用やプログラムの修正で回避することが可能です。

「IoTサポート」では前月のマシンの稼働状況について、具体的な分析レポートを毎月発行しています。月次レポートではマシンの稼働情報、アラーム発生状況、予防保全情報に加え、日常のメンテナンスのポイントや、アラームごとの再発防止策のご案内を行っています。計画的な生産を阻害する要因を“見える化”することで、お客さまが課題を解決するためのサポートを行っています

■3つ目:「予期せぬ停止からの
早期復旧サポート」

日常のメンテナンス、定期点検、予防保全を行っていても、すべてのトラブルを回避することはできません。残念ながら、どうしても突発的なトラブルが発生することがあります。

このような場合でも、「IoTサポート」では、マシン内で発生した重大なアラームをいち早く検知し、アラーム解除手順や復旧方法などを写真・図解で分かりやすく説明する復旧資料を提供します。これにより、お客さま自身でできる復旧作業やセルフメンテナンスを迅速に行うことができ、最短時間で生産を再開することが可能になります。

また、「IoTサポート」とお客さまとのコミュニケーション手段は、PCまたは専用タブレットによるチャット形式で、簡単でタイムリーに写真やマニュアルのやり取りが可能です。お客さまのマシンの映像を共有しながら、サポートセンターとのビデオ通話とAR技術を駆使したオンラインサポートも提供しています。映像が共有できることで、電話や文字では伝わりにくい状況も一目瞭然となり、原因を特定するスピードと正確性が格段にアップします。

お客さま事例のご紹介

ここからは「IoTサポート」を活用するお客さま事例をご紹介します。

作業者の操作習熟をサポート

「クリーンルーム装置」を製造する(株)赤土製作所(埼玉県越谷市、赤土嘉治社長)の需要先は、半導体産業のみならず、製薬、バイオテクノロジー、医療機器、病院、EV車載バッテリーの電池製造現場など多岐にわたります。製造する主なクリーンルーム装置は、ファンフィルターユニット、クリーンブース、クリーンベンチ、パスボックス、エアシャワーなど様々なタイプがあります。また、同一仕様でまとまった台数の量産品から、用途に応じたオーダーメイドに対応した多品種少量の製品にも対応しています。

左から製造部板金課の小山健一主任、赤土嘉治社長、製造部板金課の杉崎猛課長

左から製造部板金課の小山健一主任、
赤土嘉治社長、製造部板金課の杉崎猛課長

2019年、ファイバーレーザ複合マシン「LC-2515C1AJ」を導入する際に「IoTサポート」の活用を始めました。

赤土嘉治社長は、「IoTサポート」の活用に至った経緯について、次のように語っています。

「初めてのマシンだけに、操作する作業者の知識が未熟で分からないことも多いため、『IoTサポート』を活用すれば、作業者の操作習熟をサポートしてくれるのではと考えました。また、同型機を使っている他の会社で故障発生はなかったのか、あらかじめ教えてもらえるのであれば便利と考え、セットで導入しました」(赤土嘉治社長)。

「IoTサポートセンター」活用のきっかけとなったファイバーレーザ複合マシン「LC-2515C1AJ」

「IoTサポートセンター」活用のきっかけとなったファイバーレーザ複合マシン「LC-2515C1AJ」

さらに、2022年9月にはベンディングマシン「HG-1003ATC」と「HG-1303」をオンラインサポートキット(タブレット端末)とセットで導入。「LC-C1AJ」「HG-ATC」「HG」の3台のマシンで「IoTサポート」を活用するようになりました。利用実態としては、稼働中に発生した不具合に関する問い合わせが多いといいます。

自動金型交換装置付きベンディングマシン「HG-1003ATC」(奥)とベンディングマシン「HG-1303」(手前)も「IoTサポート」につながっている

自動金型交換装置付きベンディングマシン「HG-1003ATC」(奥)とベンディングマシン「HG-1303」(手前)も「IoTサポート」につながっている

製造部板金課の杉崎猛課長は「不具合が発生した場合や操作方法が分からなくなった場合は、担当の作業者が上司に連絡し、現場で対応策を検討して、作業者に対応方法を指示していますが、社内で対応できない場合は『IoTサポートセンター』に問い合わせています。特に導入当初は、作業者が操作に慣れていないこともあって、操作方法やパラメーターの設定方法などを教えてもらい、安心して稼働を見守ることができる有効なサービスだと思いました」と語っています。

製造部板金課の小山健一主任は「問い合わせの形態はチャットやビデオ通話などがあります。ビデオ通話で担当者から指示を受けて撮影すると、その動画を見ながら明確に解決手段を教えてもらえるので、対応が楽になりました。これまでは担当のサービスマンに電話で状況を伝えようとしても、ままならないことがあったので、不具合の解消や復帰までの時間はかなり短縮したと思います」と評価しています。

「IoTサポートセンター」とは、パソコンまたは専用タブレット端末による音声やチャット形式のやり取りできる。動画や写真を送ることもできるので状況を説明しやすい

「IoTサポートセンター」とは、パソコンまたは専用タブレット端末による音声やチャット形式のやり取りできる。動画や写真を送ることもできるので状況を説明しやすい

赤土社長は「先頭工程であるブランク工程の加工マシンは、材料棚・製品棚を備えているので、長時間連続稼働を常態化したい。工場のマシンとアマダがリモートでつながり、異常を検知するとアマダ側からお知らせが来るため、不具合によるマシンの停止時間が短縮され、加工設備の安定的な稼働が可能になります。『IoTサポート』は短納期対応が求められる時代に必要不可欠なサービスだと思います」と期待を寄せています。

短納期対応の時代に
必要不可欠なサービス

車体開発プレス部品の製作、精密試作板金、建設機械、各種産業機器部品加工を手がける(有)早野研工(岐阜県大垣市、早野文仁社長)は、リーマンショックを契機に、「待ち工場から価値工場へ」「モノづくりの魅力を発信する」をコンセプトに掲げ、B to C向けの商品開発にも挑戦し始め、独自のアイデア商品を生み出すようになりました。2013年には様々な分野で同社の設備・技術に注目してもらうため、Webサイトのコンテンツを工夫して露出度・認知度アップを目指しました。

早野民智夫専務(左)と早野文仁社長(右)

早野民智夫専務(左)と早野文仁社長(右)

2015年には「養老工場」(岐阜県養老郡養老町)に南棟を新築。2016年には「ものづくり補助金」を活用して、ファイバーレーザ複合マシン「LC-2512C1AJ」(棚+テイクアウトローダー付き)を導入。2017年には3次元レーザ加工からパンチ・レーザ複合加工まで、レーザ加工の多様なニーズに対応する専用サイト「レーザー加工.com」を立ち上げ、Webマーケティングに取り組みました。

2016年に導入したファイバーレーザマシン「LC-2512C1AJ」

2016年に導入したファイバーレーザマシン「LC-2512C1AJ」

2022年には「事業再構築補助金」を活用して、自動金型交換装置付きベンディングマシン「HG-1003ATC」、ファイバーレーザ溶接機などの最新設備を導入しました。こうした社内外での積極的な取り組みと合わせ、モノづくりプロセスのDXに関しても、3次元CADの導入による製品モデルを活用した可視化に取り組んできました。

2022年に導入した自動金型交換装置付きベンディングマシン「HG-1003ATC」

2022年に導入した自動金型交換装置付きベンディングマシン「HG-1003ATC」

同社は、「LC-2512C1AJ」導入後の2018年から「IoTサポート」を活用するようになりました。

「これまではアマダのサービスマンにサポートしてもらっていましたが、タイミングによっては対応に時間がかかることもあります。『IoTサポートセンター』につながるようになって、こちらからの問い合わせに対してリモートで状況を確認しながらサポートしてもらえるのはとても便利だと感じました。操作方法が分からなくなった場合や加工条件を変更したい場合、作業者はまず私に尋ねてきます。その度に仕事の合間を縫って対応するのも大変です。しかもすべてのことが分かるわけではないので、結果的にサービスマンに電話をかけて尋ねることになります。そうした時間や工数が『IoTサポート』で少しでも低減できるのなら、活用してみようと考えました」と早野民智夫専務は語っています。

「LC-C1AJ」の専任オペレーターがタブレット端末を使い、「IoTサポートセンター」にチャットで問い合わせを行う

「LC-C1AJ」の専任オペレーターがタブレット端末を使い、「IoTサポートセンター」にチャットで問い合わせを行う

「LC-C1AJ」は先頭工程のブランク加工を担う中核マシン。そのマシンが止まれば、復旧までに生産計画の見直しや工程の組み替え、オペレーターのシフト変更など、様々な調整が発生し、多くの工数を費やさなくてはなりません。計画変更に伴い、金型交換など多くの段取り換えも発生します。それによって納期遅れが発生すれば、得意先からの信頼を失いかねません。可能な限り早期にマシンを復旧することが求められます。

「IoTサポート」では、マシンからリモートで取得したデータに基づき、重大な不具合が発生する前に、予防保全の提案が行われます。

「レーザ加工では、水配管フィルターの汚れが原因でアラーム停止が起きる場合があります。その場合はアラーム停止の度にフィルターを丁寧に清掃することでアラームを解除し、再稼働していました。ところがフィルターの汚れによるアラームが頻繁に発生するようになり、ついには水配管が詰まってしまい、稼働できなくなりました。問題の原因は、浄化フィルターの交換を忘れていたこと。そういうケースでも『IoTサポート』では、冷却水の状態をリモートで取得し、浄化フィルターの劣化状態を検知することができるので、マシンが停止する前に消耗部品の交換計画を提案してくれるので安心です」。

「オンラインサポートのビデオ電話を使って、加工で困っている点を動画にしてサポートセンターに送ると、解決のための提案をしてくれるのもありがたい。また、当社の場合は課題を解決し、製造現場の効率化やコスト削減、品質向上を実現するための金型提案もしてもらえて助かりました。バリレス加工を行う場合にはローラー面取り金型を提案してもらいました。『IoTサポートセンター』には加工、CAD/CAM、金型などのプロフェッショナルが常駐していて、課題に応じて適切な対応をしてもらえるので助かっています」(早野専務)。

NC装置でマシンの情報を確認しながら「IoTサポートセンター」に問い合わせる様子

NC装置でマシンの情報を確認しながら「IoTサポートセンター」に問い合わせる様子

「『IoTサポート』は、短納期対応の時代に必要不可欠なサービスになっていくと思います。『つながっている』という安心感がユーザーに生まれていけば、きわめて有益なサービスになると思います。当社では今のところ『LC-C1AJ』だけがつながっていますが、いずれはほかのマシンにも広げていくことも考えます」と早野社長は語っています。

記事:マシニスト出版

つながる安心、スマートに生産できるモノづくり

アマダのIoT「V-factory」
詳細はこちら