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導入事例紹介

これからの溶接は
ロボットに任せる!
非熟練者でも高品質を
実現する現場をご紹介

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誰でも・どこでも使える
人と環境にやさしい
溶接システムへと進化

板金加工業界では人手不足が深刻化するとともに、現場作業者の高齢化や若年作業者への技術・技能継承に関する人材育成課題に直面しています。日本能率協会の調査では、製造業の78%が「人材不足」を最重要課題と認識しており、解決策として自動化とロボット化の進展が重要な役割を果たすと考えられています。

特に溶接工程は、高度な熟練作業者の手作業により支えられていましたが、昨今は経験を備えた技能者不足が深刻な問題になりつつあります。
また、人手不足対策も含めて作業者の技術・技能、経験などの知識・知見を継承できるよう、プログラム・加工条件としてデジタル化し、保存することで、知識・知見を社有財産とすることを可能にする「ファイバーレーザ溶接システム」の普及が拡大しています。

アマダは2012年、アーク溶接やYAGレーザ溶接が主流の板金業界へ向けて、多関節ロボットと組み合わせたファイバーレーザ溶接システム「FLWシリーズ」を初めてリリース。ファイバーレーザ溶接特有の低ひずみで滑らかな溶接ビードにより、仕上げ工数の削減、リードタイム短縮を提案しました。

2017年には、進化したアマダ独自の光制御技術「ENSISテクノロジー」を搭載した「FLW-3000ENSIS」を発表。ENSISテクノロジーによる「リングモードビーム」と「アダプティブフィラー制御」により、「レーザ溶接はすき間に弱い」という常識を覆しました。

2024年秋に発表された最新の「FLW-ENSISeシリーズ」と「FLW-3000Le」は、新たなNC装置「AMNC 4ie」を搭載し、Easy(誰でもより簡単に)、Efficiency(どこでも効率よく)、Environmental(環境にやさしい)、Evolution(お客さまとともに発展する)の4つの“E”をコンセプトに、誰でも・どこでも使える人と環境にやさしいマシンへと進化しています。

この「FLW-ENSISeシリーズ」では、多品種少量生産の板金加工において効率的な溶接ができるハイエンドモデルです。ペンダントによる面倒なロボットティーチング作業が不要になる「TAS」(ティーチング・アシスト・システム)も進化し、AIにより溶接線を自動補正する「AI-TAS」機能により、複雑なロボット操作のスキルを持たない人でも安心して作業することができるようになりました。

位置ズレを自動補正する「AI-TAS」機能画面

位置ズレを自動補正する「AI-TAS」機能画面

「FLW-3000Le」は、精密板金業界からのニーズにフォーカスし、小型・高精密溶接に対応したミドルレンジモデルマシンです。3kW発振器を搭載しながらも、設置面積を従来機種より約37%へ大幅に小型化させました。小型ヘッドの採用により、狭小部の溶接も可能となり、加工範囲を拡大しました。また、治具や段取り情報などのノウハウを入力したプログラムと紐づけて運用することで、経験の浅い作業者でも、データを確認しながらオペレーションが可能となっています。

従来機比37%へ大幅スリム化

ここからは「FLW-6000ENSISe」「FLW-3000Le」を活用し、大きな効果を上げているお客さま3社の導入事例をご紹介します。

3台のファイバーレーザ溶接機をラジエーター部品の溶接に適用

(有)新海製作所(東京都西多摩郡瑞穂町、新海英次社長)は、1960年に新海英次社長の祖父が東京都立川市で2~3次サプライヤーとして二輪車の部品加工を行う工場を開業。その後、プレス加工を主業務としてきました。

新海社長が入社した1990年代は、プレスの仕事が減っていく中でプレス加工と板金加工に加えて溶接・組立まで一貫して行う体制へとシフト。今では産業機械、農耕機、大型バス・トラック向けのラジエーターメーカーから受注するファンシュラウド、ファンガード、フレーム、ブラケットなどの仕事が90%以上と多岐にわたっています。
発注元のラジエーターメーカーは2022年にトヨタ自動車のグループ傘下に入りました。同社はラジエーター部門の1次サプライヤーとして継続して信頼され続けています。

新海英次社長

新海英次社長

ファンシュラウドとファンガードは、ラジエターファンを保護するための部品です。いずれもエンジンの冷却に欠かせない部品で、厳しい検査が行われ、溶接品質が重視されます。
しかし、TIG溶接や半自動溶接は作業者にスキルが求められ、作業者ごとに品質のバラツキが目立ちました。特に2次作業として発生する熱ひずみによる変形部をハンマーでたたいて修正する作業や、溶接ビードを除去する作業などは、技術や作業負担が大きく、課題となっていました。
新海社長は工法転換として接着剤やYAGレーザ溶接を検討しましたが、接着構造は板厚の制約があること、YAGレーザは溶接部の強度不足や、溶接部の劣化割れなどが発生するおそれがあるため、工法転換には至りませんでした。

対応について考えあぐねていたところへ、2019年にアマダ・八王子営業所で開催されたイベントに足を運び、ハンディファイバーレーザ溶接機「FLW-600MT」が置いてあるのを見て興味を持ったという新海社長。試しに使用し、衝動買いで導入を決めたそうです。

「『FLW-600MT』は出力600Wで、板厚は3.0mmまで、さらに0.5mm以下のステンレスの薄板溶接に対応できる特徴がありました。また、ファイバーレーザならではの、なめらかなビード面で、ひずみの少ない高品質な溶接ができるようになり、これまで熟練技術(または職人技)が必要なハンマーでたたいて修正する2次作業などが不要になりました。お客さまには、引張試験や強度試験の資料をエビデンスとして提出し、工法転換の承認をいただきました」(新海社長)。

ハンディファイバーレーザ溶接機「FLW-600MT」による溶接作業

ハンディファイバーレーザ溶接機
「FLW-600MT」による溶接作業

その後、同社での板厚範囲を安定して溶接でき、さらに十分な溶接強度を得るため、キロワット級の溶接機が必要になってきました。
そこで、2022年に定格出力1500Wのハンディファイバーレーザ溶接機「FLW-1500MT」を導入。発振器の高出力化に伴う加工領域の拡大に加え、「FLW-600MT」にはなかったウォブリング機能が搭載されたことで、幅の広いビードの形成が可能となり、ギャップ(すき間)への対応力が向上し、安定したフィラー溶接ができるようになりました。

しかし、トーチを手で持って作業するため、作業者が呼吸をするだけでレーザの照射角度が変わってしまうことなど、比較的熟練技能が必要なハンディタイプならではの課題もありました。
そこで、同社は小型ロボットで狭い設置スペースにも設置でき、さらに小型ヘッドで狭い箇所の加工が可能なファイバーレーザ溶接システム「FLW-3000Le」を検討し、2024年7月に導入しました。

ファイバーレーザ溶接システム「FLW-3000Le」による溶接作業

ファイバーレーザ溶接システム
「FLW-3000Le」による溶接作業

同社では、2019年から2024年までの5年間で3台のファイバーレーザ溶接機を導入し、TIG溶接・半自動溶接と比較して手直しやひずみ取りの作業を大幅に軽減するなど、その効果は計り知れないといいます。

「新規案件で3次元測定機メーカーの調達担当から、『測定機を設置する架台の製作にファイバーレーザ溶接を応用することで精度の高い架台ができることが分かり、これから精密測定機への応用を進めていきたい』とお声がけをいただきました。応用分野がさらに広がることで、ファイバーレーザ溶接の認知度がさらに高まることを期待しています」(新海社長)という。

「FLW-Le」で溶接したファンガード(修正作業なし)

「FLW-Le」で溶接したファンガード(修正作業なし)

「FLW-ENSISe」導入で
生産性が5~10倍に

(有)トライテック(広島県広島市、山藤照彰社長)は2024年3月、ファイバーレーザ溶接システム「FLW-6000ENSISe」を導入。「従来工程と比較すると、5~10倍は速くなったと思います」(山藤照彰社長)と大きな導入効果を実感しています。

同社は現在、ビル・工場の守衛所やコントロールセンターに設置される制御盤、製鉄所などのプラント向け高圧配電盤の筐体、半導体や医療機器に使われる純水や精製水処理装置用キャビネットのタンクや、大手企業と共同で出願した特許が2024年に認められ、同社が独自に開発したコンクリート(ロード)カッターの誤切断を防ぐプロテクター「BOGO-MAX」などを製作しています。

左から山藤照彰社長、居倉與三郎さん、濱野優基さん

左から山藤照彰社長、居倉與三郎さん、濱野優基さん

増加する新規品の受注に対応するため、2014年以降、パンチングマシンやベンディングマシン、YAGレーザ溶接ロボットを導入し、設備を拡充してきました。

ブランク・曲げ工程でコンピュータ化・NC化が進む一方で、溶接工程ではTIG・半自動を中心に大きな変化がありませんでした。しかし、多能工化を進める中で、誰が溶接しても同じ溶接品質の製品ができる仕組みづくりを考え、YAGレーザ溶接ロボット「YLR-1500Ⅱ」によるレーザ溶接を導入しました。
しかし、YAGレーザはパルス発振のため、タンクのような周長のある溶接に必要な連続溶接(CW発振)に対応できず、溶接機内部の光学部品のクリーニング・調整など、定期的なメンテナンスが必要なためランニングコストも高く、溶接線を教示するティーチングと補正に時間がかかるなど、多くの課題がありました。

ファイバーレーザ溶接が実用化されると、同社もハンディタイプの出力2kWのファイバーレーザ溶接機を導入しましたが、TIGや半自動溶接に比べて作業性が改善されるかといえば、そうではなかったといいます。
そこで、安定した品質を出すためにファイバーレーザ溶接ロボットの導入を検討しましたが、当時のファイバーレーザ溶接ロボットは出力3kWのものしかなく、3kWではSUS304の板厚3.0mm、4.0mmの溶接強度に不安があるため、4kW以上の出力が必要でした。

そのような中、2023年5月に待望の6kWのファイバーレーザ溶接システム「FLW-6000ENSISe」が発表されました。「FLW-ENSISe」は効率的な溶接ができるように、様々な継ぎ手形状を学習したAIにより、溶接線を自動補正する「AI-TAS」機能や、レーザ加工ヘッドのノズル高さを自動調整する「自動ノズルギャップ調整」機能で自動化機能が強化されています。

ファイバーレーザ溶接システム「FLW-6000ENSISe」による溶接作業

ファイバーレーザ溶接システム「FLW-6000ENSISe」による溶接作業

山藤社長は「FLW-ENSISe」の実機デモを見て、「これなら十分使える」と判断し、2024年3月に導入しました。
TIG溶接一筋でやってきたベテラン社員に「AI-TAS」によるティーチング作業を行ってもらい、溶接経験が少ない社員にはワークの載せ替えなどの直接作業を担当してもらうことで溶接作業を覚えてもらい、多能工化をさらに進めていくことを考えました。

TIG溶接のベテラン作業者もロボットの操作は初めてでしたが、使い始めてみると思った以上に操作が簡単で、導入からわずか半年で操作に習熟、ロボットプログラムの補正もテキパキこなすことができました。
これにより、溶接工程の担当者からは「この製品も工法転換してロボットでできないか」といった相談が頻繁にくるようになったそうです。

「AI-TAS」(ティーチング支援システム)の画面

「AI-TAS」(ティーチング支援システム)の画面

「作業者が溶接すると、体調や疲労によって品質にバラツキが出ますが、ロボットなので繰り返し使っても品質は安定しています。さらに『AI-TAS』により、補正も短時間で済むので、従来工程と比較すると、5~10倍は速くなったと思います」。
「6kWのファイバーレーザ溶接システムを見るのは初めてのお客さまが大半で、生産性が上がってコストダウンにもつながると満足いただいています。新規案件の引合いも増えていて、導入効果が大いにあります。現状ではリピート対応だけで目いっぱいで、新規対応ができない状況です」(山藤社長)という。

「FLW-ENSISe」で溶接した製品

「FLW-ENSISe」で溶接した製品

万博会場「大屋根リング」の回廊、「スカイウォーク」の手すりに「FLW」を活用

(株)三重工業(大阪府大阪市平野区、阪井允彦社長)は、「大阪・関西万博」のシンボル「大屋根リング」に設けられた、来場者が歩くことができる回廊(スカイウォーク)・階段・スロープなど総延長3kmにおよぶ手すりの設計・製作・施工を請け負いました。
手すりの総延長は数kmにもおよぶため、製作・施工は、大林組・清水建設・竹中工務店のゼネコン各社が3分割して受注、三重工業は大林組の一次協力会社として請け負いました。

左からレーザ溶接担当の小坂元紀さん、阪井允彦社長、栗山敏彦生産管理部長

左からレーザ溶接担当の小坂元紀さん、
阪井允彦社長、栗山敏彦生産管理部長

ベースや支柱、ブラケット、手すりの溶接作業にはファイバーレーザ溶接システム「FLW-3000ENSIS」を使用しています。従来の半自動溶接で接合された他社製品と比べ、溶接品質が圧倒的に優れていて、2次作業の工数削減にも役立ったと評判になり、同社の溶接技術力に対する評価および関心が高まっています。

「大阪・関西万博」のシンボル「大屋根リング」の回廊手すりの施工現場

「大阪・関西万博」のシンボル「大屋根リング」
の回廊手すりの施工現場

スカイウォークの工事が終了後の2025年3月末には、導入してから7年が経った「FLW-3000ENSIS」を、「FLW-6000ENSISe」に入れ替えました。
「出力が6kWに増強され、さらに肉厚のある厚板に対応することが可能となり、活躍の場が増しています」と阪井允彦社長は評価しています。

従来の半自動溶接で接合した他社製品(奥)と、三重工業がファイバーレーザ溶接で接合した製品(手前)の仕上がり比較

従来の半自動溶接で接合した他社製品(奥)と、
三重工業がファイバーレーザ溶接で接合した
製品(手前)の仕上がり比較

同社は、神社仏閣向け飾り金物をつくる銅職人だった創業者が1961年に起業しました。1966年には大林組との取引を開始し、各種建築金物・装飾金物を製造するようになりました。1971年には工場を増築、生産設備を拡充しました。1987年以降は大林組の一次協力会社として、関西圏の工事案件に付帯する建築金物類・建設用金属製品の60%を受注し、製品加工とともに、付帯する工事・施工まで一貫して対応するようになりました。
大阪・関西圏では、2025年4月に開幕した関西万博に続き、地下鉄御堂筋線淀屋橋駅の東西に建設予定のツインタワーをはじめとする市街地再開発事業と都市再生事業、さらに夢洲のIR(統合型リゾート)予定地ではカジノ・国際会議場・宿泊施設などを併せ持つ複合観光施設の建設が計画されているなど大型工事が続いています。同社ではすでに3~5年先までの工事案件を抱えているといいます。

同社ではこれまで、建築金物類の溶接はTIG・半自動溶接が中心でしたが、作業者の習熟度や体調などによる品質のバラツキが大きく、ひずみ取りや仕上げなどの2次作業に工数がかかっていました。

そこで、2013年にYAGレーザ溶接ロボット「YLR-1500Ⅱ」を導入。仕上げ工数の削減と安定した溶接品質の実現を目指しました。
しかし、当時のYAGレーザ発振器出力は1kWで溶け込みも浅く、連続溶接に非対応。励起ランプや光学部品、レーザガスなどの消耗品や頻繁なメンテナンスなど、多くの課題がありました。

「我々が金物類に使用する材料は、鉄が全体の50%を占め、そのうち約80%が溶融亜鉛めっき鋼板(ZAM)の板厚3.2~6.0mm。アルミは全体の30%で板厚2.0~2.5mm、ステンレスは20%で板厚1.5~3.0mm。手すりなどは板厚3.2mmの鉄が多く、YAGでは溶け込みが不足していました」(阪井正相談役)。

そこで、2017年にはYAGレーザの「YLR-1500Ⅱ」を、ファイバーレーザ溶接システム「FLW-3000ENSIS」に入れ替えました。

「このファイバーレーザ発振器の出力は3kWですが、ビームを制御してアプリケーションに応じた最適なビーム品質を選ぶことができます。また、焦点距離を調整できるので、材質・板厚ごとに溶け込み量を制御できます。ビームコントロールと焦点距離の補正機能を活用すると、いろいろな溶接アプリケーションに対応できます」。
「また、パネルや金物類には長尺製品、SUS304の板厚違いの材料をT型すみ肉溶接(両側)で接合する製品もあります。ロボットが自走できるように最大4m対応の治具テーブルを標準のポジショナーテーブルとは別に装備したことで、溶接範囲が広がりました」(阪井相談役)。

ファイバーレーザ溶接システム「FLW-6000ENSISe」のティーチング作業を行う小坂さん

ファイバーレーザ溶接システム
「FLW-6000ENSISe」の
ティーチング作業を行う小坂さん

建築金物業界では溶接する製品は案件ごとに異なるため、加工プログラムは大半が一度きりで使い捨てになります。しかし、安定した溶接品質が得られ、ひずみが少なく、溶接ビード面の仕上がりも良好で、ひずみ取りや仕上げなどの2次作業の手間が不要になる工数削減効果の方が大きいとしています。

ひずみ取りなどの2次作業を大幅に削減できることが魅力

ロボット仕様のファイバーレーザ溶接システムは高精度・高品位・高強度・安定加工が特長です。エネルギー密度が高く熱影響が小さいため、ひずみ取りや仕上げなどの2次作業を大幅に削減でき、スキルを問わず安定した品質で加工ができることが魅力となっています。また、苦手意識を持たれやすいロボットの運用についても、操作方法を短期間で習熟できる簡易さから、人手不足の解決策として、ロボットは即戦力になる存在に進化している段階に来ているといえます。

記事:マシニスト出版

「溶接を誰でもより簡単に」を
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「コンパクトヘッドで
狭小部にも使いやすい」

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