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導入事例紹介

「半自動・手溶接」からの脱却!
ロット対応力とバラツキの不安を解消!
~ 「ハンディ×ロボット」で
進化するレーザ溶接 ~

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「FLW-1500MT/MTS」専用協働ロボット「CR-700W」

ハンディレーザ溶接でも
長時間溶接が可能
──協働ロボットで
溶接現場が変わる

レーザ溶接機の市場では、TIGやCO2と比較して高品位な溶接が行えるファイバーレーザ溶接機が市場に浸透するに伴い、最近では、TIGのように手軽に活用できるハンディ式のファイバーレーザ溶接機が急速に普及しています。

アマダは、2022年に販売を開始したベストセラー機のハンディファイバーレーザ溶接機「FLW-1500MT」に続き、2025年に最新機種「FLW-1500MTS」をリリースしました。この「FLW-1500MTS」は、定格出力1500Wの新しい発振器を搭載したことが最大の特長です。これにより、従来機(FLW-1500MT)と比べて溶け込み深さが1.5倍向上し、対応できる板厚の拡大と高い溶接強度を実現しました。特に、開先なしで鉄・ステンレス・アルミの板厚6.0mmまで貫通溶接に対応したほか、高反射材である銅も板厚2.0mmの共付け溶接が可能になりました。
また、エネルギー密度が向上したことで、従来機よりも低い出力(最大33%減)で同等の溶接能力を実現できます。このため焼け・ひずみがこれまで以上に少ない高品位な溶接が可能となりました。さらに、従来の課題であったアルミの溶接品質も大幅に改善し、溶接表面やビード表面、ビード内部の品質が向上しています。

「FLW-1500MT/MTS」両機は、レーザ光を高速で左右に振動させる「ウォブリング機能」を搭載し、0mmから最大5mmまでウォブリング幅を調整することで、外観や強度に合わせた様々なビードの形成が可能です。この機能による幅の広い溶接ビードは、レーザの欠点であるすき間への対応力と、フィラー溶接の安定性の向上により、溶接不良の低減に大きくつながっています。

しかし、このような良好な特長を持つ反面、ハンディファイバーレーザ溶接機はTIG溶接と同様にトーチを手で送る動作が必要なため、溶接長が長い製品や、長時間にわたる作業の場合、作業者への負荷と品質のバラツキが発生することが課題でした。綺麗なビードを得るためには、技能・技量をもつ溶接作業者を選ぶ必要がありました。

こうした課題を解消できるのが近年登場した協働ロボットです。「FLW-1500MT/MTS」には、専用の協働ロボット「CR-700W」を組み合わせてロボット溶接を行うことが可能で、トーチを専用アタッチメントで固定するだけで、簡単に溶接の自動化を実現できます。すでに導入済みの「FLW-1500MT/MTS」に後付けすることも可能で、ロット数が多い製品や溶接長が長い製品に対して、安定した品質の溶接を行うことができるようになりました。また、ロボットが作業している間、溶接作業者は段取りや検品作業などを並行して進めることができるため、工程全体の効率を大きく高めることができます。

「CR-700W」には、力覚センサーを活用したZ軸(高さ)を自動で合わせるアマダ独自の機能が搭載されています。
レーザ溶接ではワークとの距離を決めるZ軸が極めて重要な要素で、溶接品質や加工精度を大きく左右します。手作業でZ軸の最適な設定を行うのは容易ではありませんが、「CR-700W」はXYのポイントを取るだけでティーチングを完了することができます。Z軸の設定を自動で行えることで、誰でも簡単にレーザ溶接作業を行えるようになります。

ここからは、「CR-700W」を導入されているお客さま2社の事例をご紹介します。

半導体洗浄装置用タンクの溶接の
省力化・品質安定化を実現

精工理化医療電機(株)(大阪府大阪市、天満克之社長)は、1941年に医療検査機器の製造業として創業して以来、一貫してステンレス製の高品質な製品の設計・製造を一筋に事業を展開してきました。

1962年頃からは半導体・FPD製造装置メーカーとの取引が始まりました。得意先は半導体洗浄装置の世界トップシェア企業で、タンクの厳しい品質が求められます。同社はこの厳しい要求をクリアし、現在までタンク製造の重要サプライヤーとして、機種ごとに毎月10~100個のタンクを一貫生産しています。

また、タンク以外の装置カバーや配管ダクトなど月産1~50個という多品種少量のステンレス製板金製品も受注しており、売上の多くが半導体・FPD製造装置関連となっています。使用材料の90%以上がステンレスで、板厚は大半が0.5~5.0mmとなっていますが、9.0mm、12.0mmといった中板もあり、アングル材の加工も少なくありません。

杉森康弘八尾工場長(左)と天満克之社長(右)

杉森康弘八尾工場長(左)と天満克之社長(右)

2023年10月にハンディファイバーレーザ溶接機「FLW-1500MT」を導入しました。この「FLW-1500MT」は同社にとって2017年に導入した1kW搭載機に次ぐ2台目のファイバーレーザ溶接機でした。

洗浄装置のタンクの需要が伸び、得意先の中期経営計画でもパワー半導体やAI向け半導体の市場拡大が見込まれており、得意先の増産要求に対応するために、溶接作業者の育成が大きな課題となっていました。TIGは精密な溶接に適しており、溶接の仕上がりはほかの溶接と比べても綺麗という特長があります。しかし、片手で溶接トーチを操作しながら、反対の手でフィラーワイヤーを送る必要があり、操作には高い技術が求められます。熟練の溶接作業者に育つまでには、長い時間が必要とされます。また、溶接品質にバラツキが出やすい、作業者のスキルによって仕上がりが異なる、溶接速度が遅い、量産には向かないといった多くの課題がありました。

同社はこれまでTIG溶接を中心にステンレス製のタンクやカバーなどの溶接に関わることで、得意先から高い評価を受けてきました。しかし、人手が不足し、ステンレスの薄板を精密溶接できる作業者の育成が難しくなってきました。レーザ溶接には以前から関心を持っていましたが、YAGレーザはパルス発振のためタンクの漏れを防ぐ気密溶接には適さないと聞いていました。

その後、知り合いの社長からファイバーレーザ溶接機の話を聞いた杉森康弘工場長が実際の溶接作業を見せてもらったところ、ファイバーレーザ溶接はCW(連続)溶接に対応できるため、気密溶接が求められるタンクのような製品にはうってつけだと分かりました。溶接品質のバラツキも抑えられ、溶接ひずみがなく、溶接ビードも綺麗なので、後処理が不要になる点も魅力でした。

専用ソフト搭載のタブレット端末でティーチングを行うインドネシア人の特定技能外国人の女性

専用ソフト搭載のタブレット端末でティーチング
を行うインドネシア人の特定技能外国人の女性

「私はTIG溶接に40年携わってきましたが、ファイバーレーザ溶接を見た瞬間、これからはファイバーが中心になると直感しました」(杉森工場長)

導入後はファイバーレーザ溶接に工法転換する製品が増えていき、2023年10月に2台目のファイバーレーザ溶接機として「FLW-1500MT」を導入しました。1号機と同様に未経験の作業者、インドネシアの特定技能外国人が担当し、不具合が発生することもなく、順調に立ち上がりました。

「しかし、ハンディは人手による作業のため、どうしても品質のバラツキが発生します。これを解消するにはロボット化しかないと考えていました。そこに、後付けができる協働ロボット『CR-700W』が発表されました。協働ロボットのアームにトーチを装着すれば、ヘッドがぶれることはありません。直線はともかく、曲線を描くような溶接では、メリットが大きいと思います」。

「ロボットは一度ティーチングすれば、初回品以降の作業を繰り返し行うことができるので、段取りが削減され、生産性も改善します。作業者にとっても会社にとっても導入効果は高いと判断し、2024年10月に導入しました。導入から半年が経過し、当初の担当者が帰国したため、別のインドネシア人の女性作業者が操作を担当するようになりました。必ずしも十分とはいえない習熟度でも活用できるほど簡単です。現状はロットの小さい製品が多いので、ハンディで行う作業の方が速いという見方もありますが、リピートでロットのある仕事を流すようになれば効果は出ます」(天満克之社長)と導入効果を語っています。

ハンディをロボットに取り付けて溶接した製品

ハンディをロボットに取り付けて溶接した製品

アルミ溶接の対応力強化で、
協働ロボットによる自動化も推進

(株)光伸製作所(京都府城陽市、狩野英樹社長)の最大の強みは溶接技術。現在は延べ32名の溶接免許取得者(ステンレス鋼溶接・半自動溶接・アルミニウム溶接)が在籍し、コンマ台の薄板から板厚20mm超の厚板、機械加工部品まで幅広く対応しています。

2001年と2018年にはハンディYAGレーザ溶接機を導入し、ステンレス鏡面カバーのような溶接焼けや熱ひずみを嫌う製品の溶接品質向上をはかりました。気密溶接にも対応し、高い精度と美しい仕上がりにこだわり続ける同社の溶接技術には定評があります。

加工材料は鉄系が約40%、ステンレスが40%、アルミが20%で、アルミの割合が高まる傾向にあります。中心的な板厚は鉄系が0.3~16mm、ステンレスが0.3~9.0mm、アルミが0.5~10mmで、薄板から中厚板まで柔軟に対応しています。

近藤俊行専務

近藤俊行専務

溶接技術に強みを持つ同社にとって、アルミ溶接の強化は長年のテーマでした。以前からTIG溶接で対応していましたが、熱影響が大きいアルミ製品は溶接焼け・熱ひずみ・ビードなどの仕上げ作業が大きな負担となっていました。

当時設備されていたYAGレーザ溶接機は、低出力のパルス発振のため溶け込み深さや気密性に難があり、アルミの溶接には使用できず、2000年代後半にハンディファイバーレーザ溶接機が登場した時期から、アルミ溶接への適用を模索し続けましたが、納得のいく仕上がりで溶接できる溶接機は見つけられませんでした。
満を持して「FLW-1500MTS」が発表され、「初めて満足いく仕上がりで加工できました。『やっと出会えた』と思いました」と近藤俊行専務は語っています。
数量が多い一部の案件に対応するため、専用の協働ロボット「CR-700W」も併せて導入しました。同社初の溶接ロボットで、定期的に受注するロット50個程度のラベルプリンター部品や、1案件につきロット300個程度になるクリーンルーム設備部品などの活用を想定しました。

これまで、SPCC・板厚6.0mmのベースと板厚3.2mmのブラケットをT字型に接合するクリーンルーム設備部品(アンカーブラケット)は、導入前は半自動溶接で対応していましたが、数量が300個程度と多く、ひずみの修正や飛散したドロスやノロなどの除去が負担でした。
これを「FLW-1500MTS」に置き換えたところ、ベースのひずみ(反り)は半自動溶接の半分程度になりました。ドロスの発生も減少し、修正・仕上げの作業を大幅に削減できました。導入した「FLW-1500MTS」はワイヤーの送給装置を2つ装着した仕様で、肉盛り部の厚さも半自動溶接と遜色なく、今では「CR-700W」を使ったロボット溶接でも対応できるようになり、協働ロボットが溶接をしている間にオペレーターが修正・仕上げを行うことで、溶接~仕上げのトータル工数を大幅に削減することができました。

協働ロボットのダイレクトティーチングを行う

協働ロボットのダイレクトティーチングを行う

「FLW-1500MTS」のオペレーションを担当する近藤俊輔さんは「これまでは溶接作業者と、仕上げを担当する出荷・検査担当者の2~3名で、数日かけて完成させていました。今ではひずみの修正や仕上げの負担が軽くなり、協働ロボットが加工している間に仕上げを終えられるので、溶接作業者1名だけで作業を完結できます」と高く評価しています。

TIGにより溶接(A5052・板厚1.0mm)
「FLW-1500MTS」と「CR-700W」により溶接(A5052・板厚1.0mm)

左はTIG、右は「FLW-1500MTS」と「CR-700W」により溶接
(A5052・板厚1.0mm)

誰でも綺麗な溶接ができる

2社のお客さまの導入事例を紹介しましたが、いずれにも共通しているのが「CR-700W」は量産の自動化というよりも、トーチを手で送る動作を手軽に自動化する機械として活用している点です。ティーチングの煩わしさを極限まで簡素化し、簡単な操作で綺麗なビードを得ることができます。ロボットで不安に感じられているティーチング作業が簡素化されたことで、作業者を選ばず綺麗な溶接ができる点が高く評価されています。
このように、トーチをロボットに持たせることでこんなに便利に。普及が進むハンディレーザ溶接機は年々進化し、様々な場面で活用の幅が広がっています。

記事:マシニスト出版

新しい発振器が生み出す
対応力の強化

「FLW-1500MT/MTS」
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「手溶接の限界」から脱却し、
大ロット・バラツキ不安を解消する

「CR-700W」
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「実機を見てみたい、
試しに操作してみたい」

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