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モノづくり企業の挑戦

板金業界

人手不足解消と人材育成に対応
~ 優秀板金製品技能フェア参加を効果的に活用 ~

昨今の板金業界では、製造の中心となる技能人材の確保が難しく、人手不足が大きな経営課題となっています。しかし、人手不足解消と人材育成を一体ととらえて取り組み、成果をあげている企業もあります。
どのような対策が人手不足解消、人材育成につながるのか、その好事例を紹介します。

■ 今いる人材の離職を防ぎ、新卒採用にも効果を上げる

慢性的に応募者が少ないことだけでなく、今いる人材の流出も人手不足の大きな課題となっています。
この人材の離職を防ぐには、待遇だけでなく、社員のやる気アップにも力を入れる必要があります。

エレベーターやエスカレーターなどの昇降機部材、医療機器向け精密板金部品のほか車両部品、配電盤や制御盤などを製造する、ナサ工業株式会社(福岡県糟屋郡須恵町/代表取締役社長:長澤貢多氏)は、2010年度から毎年、職業訓練法人アマダスクールが開催する「優秀板金製品技能フェア」(以下「板金フェア」)に連続で応募し、これまでに「経済産業大臣賞」「厚生労働大臣賞」をはじめとした総合賞5回のほか、金賞、銅賞、技能賞などの賞を総なめにしたモノづくり企業で「日本一の中小企業」を目標に掲げています。

第28回優秀板金製品技能フェアで経済産業大臣賞を受賞した「スケルトンエスカレーター」

第28回優秀板金製品技能フェアで経済産業大臣賞を受賞した
「スケルトンエスカレーター」

第29回優秀板金製品技能フェアで厚生労働大臣賞を受賞した「FLAT-PANEL CHAIR」

第29回優秀板金製品技能フェアで厚生労働大臣賞を受賞した
「FLAT-PANEL CHAIR」

長澤社長は、「当社には、モノづくりに楽しみを感じて入社する人が多いです。しかし、日々業務に追われ、その初心から遠ざかってしまうこともあります。そこで、年に1度の板金フェアを『モノづくりの楽しみを皆が思い出せるイベントにしよう』と考え、参加を奨励しています。
当社は2015年に『一塊』となり『上質を追求』するという経営理念を定め、日本一の中小企業になることを目標に掲げました。板金フェアでも日本一を目指そうと全社をあげて推進し、社内でアイデアや参加希望者を募り、その中から分野ごとにメンバーやチームリーダーを決めて製作に取りかかります。
各チームには私や専務、役付きのベテラン社員がサポーターとして加わり、助言をするという仕組みも導入しています。全社一丸となって取り組むことで、作品のレベルだけでなく社員のスキル、意識も向上しています。
作品が入賞した際には祝賀会で大いに盛り上がりますし、当社にとって重要なイベントのひとつになっています。」と板金フェアへの取り組みについて語っている。

「FLAT-PANEL CHAIR」に座る長澤社長と制作チームの社員との記念写真

「FLAT-PANEL CHAIR」に座る長澤社長と
制作チームの社員との記念写真

こうした手厚いサポートによって先輩が後輩に仕事を教え、上司が部下をサポートすることで風通しも良くなり、社員教育、モチベーションアップにつながっています。 これにより、社員の定着率は高く、勤続年数が10年越えの中堅社員も多く在籍しています。
さらに、ここ数年で社員数は100名の大台を超え、社員の平均年齢も若返ってきています。そして、こうした取り組みをWebサイトやSNSで情報発信することで新卒者採用にも効果を上げています。
また、社内ではキャリアパスを明確にして、自分の成長、能力や成果が、職位や技能の認定にどう影響するのか明確にすることで、社員はどのような仕事をすれば評価されるのか、自分の立ち位置が現在どこにあるかが分かるようにしようとしています。
これにより、社員のやる気が引き出され、会社に対するロイヤリティーも改善しています。

より働きやすい会社を目指し、2018年10月には会社隣接地に企業主導型保育施設「ナサの森保育園」を開園、子育て世代の社員が安心して仕事を継続できる環境も整備しました。

ナサの森保育園の園舎

ナサの森保育園の園舎

■ 大切な企業理念とビジョン

長澤社長は「これまでもお客さまの様々な「想い」を皆で乗り越えカタチに変えてきました。これからも社員「一塊」で上質なモノづくりを追求し、社会全体に幸せをもたらしていきたい。その活動を通じ全社員の技術と人格を育て、内側からの幸福を実現したい。」と語っている。こうした経営者の経営理念、ビジョンも重要です。

製造業の人手不足対策はひとつではありません。様々な方向から対策を考え、実行していく必要があります。同社の取り組みを見てそのことが良く理解できました。

設計室でも大型ディスプレイで生産状況を全社員が把握できる

設計室でも大型ディスプレイで生産状況を全社員が把握できる

記事:マシニスト出版