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モノづくり企業の挑戦

板金加工業界

業務効率化や人手不足
解消ツールとして
板金業界で活用が進むRPA

現場の足を引っ張る「管理業務」
と深刻な人手不足

製造工場では、現場で実際に頭や身体を使ってモノづくりを行う「実務」と、手続きや事務処理などの「業務」を混同し、付加価値を生み出す時間が減少するケースが多く見られます。

その一方で、少子高齢化による労働人口の急速な減少や、働き方改革やワークライフバランス重視の流れなど、企業を取り巻く環境も大きく変化しています。

こうした課題に対応していくためには、ムダな業務を減らして、実際のモノづくりに関わる実務の時間を増やしていくことが重要です。
その代表的な取り組みのひとつが、「生産管理システムの活用」です。

人がやらなくても良い
定型業務を改善

生産管理の業務には、取引先から紙やファックス、PDFやメール、WebによるEDI(電子データ交換)から送信される発注情報の取り込みや転記、生産管理システムへの各種入力(受注登録、作業手配、帳票印刷)など、作業者が同じ操作を繰り返す定型業務(ルーチンワーク)が数多く存在します。

こうした定型業務の効率化や人手不足の解消につながるツールとして、「RPA(Robotic Process Automation)」の活用が進んでいます。
RPAとは、PC上で行う定型業務をソフトウエアロボット(デジタルレイバー)によって自動化する技術で、以下のメリットがあります。

<RPAのメリット>
  • 人が行うよりも高速に処理でき、入力ミスなどの人的ミスも削減できる。
  • 夜間や休日を含め、24時間365日連続で稼働できる。
  • 既存システムを大きく改修せず、現在のPC操作をそのまま自動化できるため導入が容易。特にExcelから基幹システムへの入力や、Webからの情報取得・整理が得意。

そこで今回は、こうしたRPAを板金業界の生産管理システムの自動化に活用し、効果を上げている2社の事例をご紹介します。

業界に先駆けてデジタル化・
DX化を推進

(株)ヒラノ(千葉県旭市、平野利行社長)は、Web受発注サービスから受注する仕事にRPAを導入して効果を上げています。

同社は2003年以降、生産管理システム「WILL」をベースに、見積りから受注、3次元設計・プログラム作成、生産手配、出荷、財務会計まで一元管理する仕組み「Hirano-Factory」を業界に先駆けて構築し、「デジタル板金」を推進されてきました。

そして、2016年には新工場「開発センター」を開設し、2017年以降は大型の自動化投資に踏み切り、社内の改善・改革チームが生産プロセスの自動化・合理化を進めてきました。
それと並行して、「3Dモデルから始まるDX」をテーマに、クラウド技術を活用することでグループ企業や顧客とつながる仕組みを独自開発。こうした取り組みは日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の「モデル事例」に認定されるほど注目されています。

工場内に設置された「Hirano-Factory」のモニター

工場内に設置された「Hirano-Factory」のモニター

MicrosoftのRPAで
業務改善を実現

同社は2003年頃から大手建設機械メーカーのサプライヤーとして取引を継続しています。パーツ加工からサブアッシーの下塗り塗装までの一貫生産に対応し、売上は全体の40%弱を占めるようになりました。

さらに、もう一方の主力得意先である建築業界の受注低迷が大きく影響していた中で、2025年から本格化したWeb受発注サービスを経由した仕事が順調に伸びていきました。

大型製品に対応するベンディングロボットシステム「HG-2204Arm」

大型製品に対応するベンディングロボットシステム
「HG-2204Arm」

「現在は1日あたり200件前後の受注があります。業種も様々な多品種少量生産で短納期対応が必要です。発注情報はWeb-EDI、製品データは3次元CADデータで入ってきます。
中でもバッチ展開された展開図データはコード番号で紐づけされ、受注登録した製品と一体で作業指示に対応して現場で呼び出せる流れをRPAと『WILL』で構築しました」。

「RPAは夜間に自動実行し、朝には受注登録と展開が完了している状態になっており、あとは作業者がスケジューリング、生産指示を行っています。これによって、取り込みの人為的ミスもなくなり、業務改善につながりました」。

「現在は受注全体の40%を占める建設機械建機メーカーからのWeb-EDIデータをRPAが取り込める準備を行っています」と伊藤秀昭常務は説明しています。

Web受発注サービス対応に導入したファイバーレーザ複合マシン「LC-2012C1AJe」

Web受発注サービス対応に導入した
ファイバーレーザ複合マシン「LC-2012C1AJe」

1日当たり1200件の受注アイテムをRPAが自動処理

(株)吉見鈑金製作所(長野県上田市、吉見昌高社長)の得意先は200社以上で、このうち毎月安定的に取引する得意先は50~60社。中でもコロナ禍の1年ほど前からWeb受発注サービスからの受注が急伸しており、直近では売上の35%になりました。

吉見昌高社長

吉見昌高社長

Web受発注サービスからの受注アイテム数は、直近で1日当たり1200件程度。月間アイテム数は2万件以上と、日々の受注アイテム数が多いため、これまでのように受注データを生産管理システム「WILL」に取り込み、得意先・製品別に受注登録する方法は、生産手配に連携するまでに時間と手間がかかるため、自動で登録するシステムの構築に着手しました。

工場内のネットワークカメラ映像で現場状況を把握できる「生産管理エリア」

工場内のネットワークカメラ映像で
現場状況を把握できる「生産管理エリア」

RPAを導入した受注業務の効率化

そこで同社が2022年から取り組んだのが、RPAの導入による業務効率化でした。
MicrosoftのRPAツールを使用し、自社でカスタマイズできる体制を構築しました。RPAが自動的にデータを取り込むことで、生産スケジュールの更新、在庫引き当てが容易となり、短時間で出庫・出荷指示ができるようになったことで、業務の負荷が大きく改善しました。

Web受発注サービスからの受注登録は24時間ランダムに行いますが、それ以外の得意先からは夜間にEDIデータが送られてくる場合が多いことから、RPAは朝方に自動で取り込み、担当者が出社した時にはWeb-EDIで受注した製品はすべて受注登録と作業手配が終わり、負荷状況を可視化できるようにしたそうです。

「RPAの活用で受注登録から生産手配までの効率化をはかることができましたが、まだ完成度は50%程度です。今後は生産スケジュールの更新に際して、紐づけされた製品データを得意先、製品、納期、材質、板厚別で自動ネスティングできるような段階にまで持っていきたい。また、現在は現場でシステム障害が発生し、生産が滞った際のスケジュール変更は人手で行っています。こうした生産スケジュールの自動更新ができるよう、RPAの保守部隊を別途編成して、システム停止時の復旧体制を構築したい」と吉見社長は語っています。

社内情報をクラウド管理する「Yoshimi-Cloud」の現場端末

社内情報をクラウド管理する
「Yoshimi-Cloud」の現場端末

まとめ

これらの導入事例に見られるように、RPA導入の目的は「省人化」ではなく、「人がやらなくて良い仕事を切り出すこと」にあります。
RPAは、業務を「人の作業」から「仕組みで実行する作業」へと転換することで、効率化と品質向上を同時に実現することができます。
すでに大手・中堅企業では40%以上の企業で広く活用されており、業務効率化や人手不足の解消のために、今後は中小企業への普及拡大が期待されています。

記事:マシニスト出版