第10回
ベンディング(曲げ)加工 (Part 1)
7. ベンディング(曲げ)加工
ベンディング加工は、パンチングやレーザで加工したワークを曲げて、それまでの平板から立体形状にする加工工程です。


7-1. 加工の原理
ベンディング加工は、下図のようにバックゲージに突き当てたワークを直線的なパンチとダイで挟み込み、徐々に加圧しながら目標の角度まで曲げる塑性加工の1つです。

7-2. スプリングバック
曲げた部分を拡大すると、下図のように外側は引っ張られ、内側は圧縮されて、相互に相反する方向の変形(ひずみ)が発生します。加圧力を取り除くと、このひずみはもとに戻ろうとするため、板材がわずかに口開きします。これをスプリングバックと呼びます。

外側は引っ張られ、内側は縮みます。加圧力を除けば、板材はもとに戻ろうとします。

力を加えている状態 Θ

力を除いた状態 Θ′
7-3. 曲げ加工の種類
曲げ加工には①パーシャルベンディング、②ボトミング、③コイニングの3つの方法があり、①②をあわせてエアベンディングといいます。各特徴は下記のとおりです。

パーシャル“partial”は「部分的な」という意味で図にあるようにA、B、Cの3点で曲げるため、こう呼ばれます。
ひとつの金型で広い範囲の曲げ角度に対応できます。

ボトミングのボトム“bottom”は「底に届く」という意味です。
比較的小さい加圧力で良い精度が得られるので、最も多く使われています。

コイニングの語源はコイン“coin”でコインが均一なことにたとえて、コイニングといいます。
高い曲げ精度が得られますが、ボトミングの5~8倍の加圧力を必要とします。
7-4. 片伸びとは
曲げ加工では、加工による材料の伸び量を考慮して加工を行う必要があります。
図のように、曲げ後のフランジ寸法Hからバックゲージ寸法Lを引いた値を片伸びといい、この片伸びを2倍した値を両伸びといいます。

H − L = 片伸び
片伸び × 2 = 両伸び
7-5. 曲げ金型
曲げ金型は、
① パンチ(上型、上刃、雄型などとも呼ぶ)
② ダイ(下型、下刃、雌型などとも呼ぶ)
③ ダイホルダー
に大別されます。
曲げ金型は、加工形状に応じ単純なものから複雑なものまで多種多様です。
通常、単純な金型で数工程に分けて加工します。
この金型がいわゆる汎用型で、Vの凹断面を持つダイとVの凸断面を持つパンチによって構成されています。

7-6. 曲げ形状
基本的な曲げ形状は、「V曲げ」「R曲げ」「へミング曲げ」の3つです。

V曲げ

R曲げ

ヘミング曲げ
7-7. 金型の選定
下記の「参考金型組み合わせ表」に表されているように、製品形状によってパンチとダイを選定します。
1. 曲げ角度、曲げ形状
ワークの曲げ角度、曲げ形状に適した金型を選定します。
2. ワークと金型の干渉
2回曲げ以上のワークでは、曲げ加工中にワークと金型が干渉することがあります。ワークを曲げたときに、ワークと干渉しない断面形状のパンチを選択しなければなりません。これは曲げ順とも関係するので、曲げ順と合わせて検討しなければなりません。

机上でワークと金型の干渉を検討するにはリターンベンド限界グラフを活用すると便利です。
右の図は、標準パンチ No.4/16/147/148を中間板AGRIP-Mに取り付けたときのリターンベンド限界グラフです。
代表的な金型でのリターンベンド限界グラフは下記のページを参照ください。
