第5回 鉄鋼材料の種類 Part4
第2章-4
第2章 鉄鋼材料とは
2. 軟鋼板
4. キルド鋼、セミキルド鋼、リムド鋼
前述したSPCC、SPCD、SPCEの種類は炭素鋼の製造方法により分類されています。
これらの製造方法の違いについて簡単に解説します。
- 炭素鋼の製造方法
- キルド鋼、セミキルド鋼、リムド鋼
- 引け巣部分は使用できないので切り捨てるためコスト高であるが内外組織が均一であるので、比較的高級な鋼材として使用される。
- SPCE
(冷間圧延鋼板、深絞り用) - SPHE
(熱間圧延軟鋼板、深絞り用) - S45C
(機械構造用炭素鋼) - リムド鋼の気泡を少なくし、キルド鋼の引け巣を小さくしたもので、キルド鋼とセミキルド鋼の中間的な性質をもつ。
- 凝固のときガスが逃げ切れず内部に微細な穴が残ってしまう。ロールで圧延すると微細な穴はくっついているが時にはくっつかないものがあり、内部に穴があいたり、切断すると二枚の板に分かれる二枚板(ラミネーション)等の現象が起こる恐れがある。
- 引け巣がないため歩留りがよく安価で加工性もよく板金材料として最もよく使用される。
- SPCC
(冷間圧延鋼板、一般用) - SPHC
(熱間圧延軟鋼板、一般用) - SS400
(一般構造用圧延鋼材)
炭素鋼は鉄(Fe)と炭素(C)の合金で、炭素(C)の他に、けい素(Si)マンガン(Mn)リン(P)、硫黄(S)が含まれ、これらを鉄の5元素といわれています。
5元素の中で、鋼の性質を大きく支配するのは炭素(C)であり、その含有量により、性質が変化します。
鋼の製造法はまず下図のように銑鉄を製造します。これを製銑といいます。

溶鉱炉から取り出した銑鉄は、炭素含有量が3~4%と多いため、炭素量を1.6%以下に減らし、不純物のSi、Mn、P、Sなどを除去するため、製鋼炉(平炉、転炉、電気炉、るつぼ炉)でさらに溶解精錬します。
精錬が終った溶鋼中には、酸素や窒素などのガスが含まれており鋼質を損うので、さらに脱酸とともに、窒素ガスの除去を行います。(下図参照)

前述のように、精錬が終った溶鋼には、酸素や、窒素などのガスが残存しているため、ガスの除去をしなければなりません。
ガスの除去の程度により、キルド鋼、セミキルド鋼、リムド鋼に分類されます。
溶鋼にフェロシリコンやアルミニウムなどの脱酸剤で充分にガス抜きを行うと“キルド” つまり、死んだように大人しくなります。これをキルド鋼といい、SPCEはこのような製造方法による鋼です。
これを、インゴット用の鋳型に注ぎ込んでも溶鋼は対流を起こさず、スムーズに冷えていきます。
これに対して、リムド鋼は、フェロマンガン(FeMn)などの弱脱酸剤を用いてガス抜きしたものです。
溶鋼中のCとOが化合してCOガスとなり、その泡がブクブク出てきてしまいます。
これを型に注ぎ込むと、泡の対流を起こしながら周辺から固まっていきます。(リミングアクションという)
最初に固まる外周辺は比較的純度の高い成分となり、内部は不純物が混入し、泡が逃げ切れず固まるので、内部に細かい穴が残ります。
このように周辺部だけ純度が高く気泡もない健全層ができます。つまり“リムド”縁がついた状態のことで、これをリム層と呼んでいます。SPCCはこのような製造方法による鋼です。
また、SPCDは、リムド鋼またはキャップド鋼(リムド鋼とセミキルド鋼の中間のもの)です。
ちなみに、セミキルド鋼はキルド鋼とリムド鋼の中間の脱酸をしたものになります。
鋼塊の種類 | 脱酸の程度 | 特徴 | 鋼種 |
---|---|---|---|
キルド鋼 ![]() |
フェロシリコンやアルミニウムなどの脱酸剤で十分に脱酸する。 | ||
セミキルド鋼 ![]() |
キルド鋼とリムド鋼の中間の脱酸をしたもの。 | ||
リムド鋼 ![]() |
フェロマンガンなどの弱脱酸剤のため脱酸が十分でない。 |