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業界ウォッチ

2021.05.26

エネルギー需給の最適化に対応

~電気自動車のリユース蓄電池を用いた自家消費型太陽光発電システムを開発~

■再生可能エネルギーへの取り組み

株式会社日本ベネックス(本社:長崎県諫早市/代表取締役社長:小林洋平氏)は、2012年に環境エネルギー事業に参入して以来、再生可能エネルギー普及のための課題に取り組む一方、精密板金加工技術を基盤として、大型映像装置、産業・メカトロ機器、空調冷熱機器製造等、幅広い事業を展開しています。

産業機器(クーリングユニット)

産業機器(クーリングユニット)

空調機器(大型空調機)

空調機器(大型空調機)

2013年には、建屋面積1万3,700m2の本社工場屋根の一部に出力300kWの太陽光発電所「ベネックス・ソーラーポート」を設置しました。また、パワーコンディショナー(PCS)収納盤や集電箱等各種板金筐体の製作も行っています。しかし、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の買取価格の下落や、さらに制度そのものが2022年4月から大幅改正されることに伴い、FIT制度に依存しない再生可能エネルギーの普及・促進のために、ピークカット用蓄電池や、自家消費型太陽光発電所の設置等、環境事業を強化しています。

本社工場のソーラーポート(長崎県)

本社工場のソーラーポート(長崎県)

ベネックス印西ソーラーポート(千葉県)

ベネックス印西ソーラーポート(千葉県)

こうした中で昨年、同社は銀行を引受先とする無担保社債「SDGs私募債」を発行しました。SDGs社債の発行は、板金業界では同社が1社目であり、調達額は再生可能エネルギー開発等の資金として充当されました。また、発行額の0.1%相当が、二酸化炭素の抑制支援や環境保全に取り組む公益財団法人日本環境協会に寄付されました。

■電気自動車のリユース蓄電池を活用したVPP実証事業へ参画

※VPP: 仮想発電所

環境事業の一貫として、2017年から電気自動車(以下「EV」)のリユース蓄電池を用いた蓄電池システムを本社工場に設置し、稼働させています。このシステムは、20フィートのコンテナにEV24台分のリユース蓄電池を格納したもので、定格蓄電池容量は576kWh、実効蓄電池容量 約400kWh。コンテナは創業以来蓄積した板金加工技術を生かし、従来の2倍に当たる24台分の電池の収納と制御を実現しました。工場やビルの電力需要ピーク時の補助電源として電力コストの削減に貢献できる他、太陽光発電システムで発電した電力を自家消費したいというニーズにも応えるとともに、災害時のバックアップ電源としての活用も可能にしています。

自家消費システム(太陽光パネル)

自家消費システム(太陽光パネル)

自家消費システム(蓄電池)

自家消費システム(蓄電池)

さらに、通信規格(Open ADR)に対応して、外部のサーバーから充放電等の運転を制御することができ、電力ネットワークや地域のエネルギー需給の最適化にも対応できるようになっています。近年、関西電力等とともに、保有する複数の蓄電池を一括制御するためのシステム(以下、RAシステム)を経由した周波数制御や、一般家庭等で広く普及するインターネット回線を活用した周波数制御の実証実験にも参加しています。蓄電池や電気自動車等のエネルギーリソースを用いた周波数制御技術の実用化に向けた技術の確立を目指して、電力の安全・安定供給および、低炭素化社会の実現に貢献しています。

蓄電池システム(外部)
蓄電池システム(内部)

20フィートのコンテナにEV24台分の使用済み蓄電池を搭載した新型リユース蓄電池システム

記事:マシニスト出版