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業界ウォッチ

2025.2.12

2024年 金属加工機械
最新トレンド レポート

日・欧・米・中で金属加工の
大型見本市が開催
―JIMTOF2024など

東京ビッグサイトで6日間開催された「JIMTOF2024」の会場風景

東京ビッグサイトで6日間開催された「JIMTOF2024」の会場風景

「JIMTOF2024」が過去最大規模
で開催

2024年秋、金属加工の最新技術・ソリューションが一堂に会する国際見本市が、日本・欧州・米国・中国の主要4地域で相次いで開催されました。

日本では、世界4大工作機械見本市のひとつ「第32回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF2024)が、11月5日から10日までの6日間、東京ビッグサイトで開催されました。

総展示場面積は11万8540m2で、前回(JIMTOF2022)と同様、東京ビッグサイトの全館を使用して開催され、出展者数は前回比16.1%増の1262社・団体で過去最多、出展小間数は同2.2%増の5743小間と過去最大規模となりました。

会期中の来場者数は前回比13.0%増の12万9018人(期間中重複なし)。このうち海外からの来場者数は同2.2倍の1万423人(構成比8.1%)で、いずれもコロナ前の水準には及ばないものの着実に回復しており、「見本市」の存在感が再び高まっていることが感じられました。

開会式の様子

開会式の様子

多くのお客さまで賑わうアマダブースの様子

多くのお客さまで賑わうアマダブースの様子

「自動化・省力化」と「工程集約」
がテーマ

今回の開催テーマは「技術のタスキで未来へつなぐ」。ますます深刻化する製造現場の人手不足や物価高・人件費高騰といった課題に向けて、工作機械・鍛圧機械を問わず、AI・IoT・ロボットによる「自動化・省力化」と「工程集約」が大きなテーマとなっていました。

工作機械に関しては、同時5軸制御マシニングセンタや複合加工機などによる「工程集約」と、パレットチェンジャー・多軸ロボット・自律走行搬送ロボット(AMR)を活用した「自動化・省力化」が、これまで以上に進化したかたちで提案されていました。AI技術を駆使した加工・動作の最適制御や機械診断・加工診断、IoT技術を駆使した遠隔監視・予防保全・稼働分析といった「DXソリューション」の提案も活発でした。

中でも「自動化・省力化」のソリューションは、これまでの「ワーク・工具の交換」にとどまらず、「これまで作業者が手がけてきた段取り作業全体」へと広がりを見せていました。

まず、出展機の多くはパレットチェンジャーを標準装備し、多軸ロボットを組み合わせたワーク・工具の自動交換ソリューションも前回から大幅に増えました。それに加えて今回は、AMRと協働ロボットを組み合わせた「工程間搬送」の提案がますます活発になっていました。

たとえば、3次元測定機で測定した電極を放電加工機へ自動搬送するソリューション、工具測定機(ツールプリセッター)で測定した工具を加工機の自動工具交換装置(ATC)へ自動搬送するソリューション、歯車研削盤から歯車測定機へとワークを自動搬送することによるインライン検査ソリューション、大型AMRによるマシニングセンタの切りくずバケットの自動搬送ソリューションなどが提案され、「単工程」から「全工程」の自動化・最適化が加速していくことを予感させました。

新しいトレンドとして、「ギガキャスト」を念頭に置いた大型機種も注目を集めていました。大手工作機械メーカーは「ギガキャスト」で製作する大型アルミダイカスト部品に対応した大型のマシニングセンタや切削ロボット、ハンドリングロボットなどを出展。新工法である「ギガキャスト」の普及ペースは未知数ですが、将来的には工作機械カバーのものづくりや、従来工法であるプレス・溶接ラインの需要にも影響をおよぼす可能性があり、今後も注視する必要がありそうです。

「積層造形」(AM)に関しては、各社がパウダーベッド方式(PBF)、指向性エネルギー堆積法(DED)の最新機種を出展しましたが、従来機種のマイナーチェンジが大半でした。その中にあって、3次元測定機と3Dプリンター(樹脂)の連携によるリバースエンジニアリングや、AMと切削を組み合わせた大型ハイブリッド機の新製品には、多くの来場者が強い関心を示していました。

アマダは26kWファイバーレーザマシン
を国内初披露

板金加工などの鍛圧機械分野でも、出展各社が最新の技術・製品を披露しました。

アマダグループは、「板金事業」「微細溶接事業」「切削・研削盤事業」「プレス自動化ソリューション・ばね成形機事業」の全5事業から、国内展示会初披露となる3機種を含む全10機種を出展しました。

「板金事業」からは、新開発の自社製高出力発振器を搭載したファイバーレーザマシン「REGIUS-3015AJe」(26kW仕様)を国内初披露。高出力発振器と3軸リニアドライブ、独自のビーム制御技術により高速・高精度・フルレンジ加工を実現しました。このハイパワーな発振器により、窒素切断の加工範囲は軟鋼・板厚20mmまで拡大しました。

アマダは新開発の自社製高出力発振器を搭載したファイバーレーザマシン「REGIUS-3015AJe」(26kW仕様)を国内初披露

アマダは新開発の自社製高出力発振器を搭載したファイバーレーザマシン
「REGIUS-3015AJe」(26kW仕様)を国内初披露

デモ加工では、従来機では酸素切断でしか加工できなかったSS400・板厚16mmの製品を、アシストガスにコンプレッサーエアを使用する「イージーファストカット」により高速・低コストで加工。これによりSPHC・板厚6.0mmの製品は、6kWファイバーレーザマシンと比べて約3.5倍の高速加工を実現しています。また、レーザの熱ひずみを利用して製品をホールドする「ソフトジョイント」により、加工後の製品の立ち上がりや落下を防ぎ、バラシ作業の負担軽減と加工品質改善に貢献すると提案しました。

全5事業から最新トータル
ソリューションを紹介

そのほか、「板金事業」から切断・溶接・積層造形を1台で行える3次元レーザ統合システム「ALCIS-1008e」(アルシス)、自動プログラム補正運転を実現したファイバーレーザ溶接システム「FLW-6000ENSISe」の出展と、製造DXソリューション「LIVLOTS」(リブロッツ)と自律搬送型ロボット「AMTES-500」(アムテス)を連動させた工程間のデモンストレーションを実施し、作業者が加工に専念できる製品搬送の自動化提案を行いました。

製造DXソリューション「LIVLOTS」と自律搬送型ロボット「AMTES」による工程間製品搬送の自動化デモ

製造DXソリューション「LIVLOTS」と自律搬送型ロボット
「AMTES」による工程間製品搬送の自動化デモ

「切削・研削盤事業」からは、新技術の可変パルスカッティング機構を搭載したパルスカッティングバンドソー「PCSAW-430AXⅡ」を国内で初披露。また、同じくデジタルプロジェクターを搭載したデジタル円筒プロファイル研削盤「DPG-R-200」を世界初披露しました。

新技術の可変パルスカッティング機構を搭載したパルスカッティングバンドソー「PCSAW-430AXII」

新技術の可変パルスカッティング機構を搭載した
パルスカッティングバンドソー「PCSAW-430AXⅡ」

デジタルプロジェクターを搭載したデジタル円筒プロファイル研削盤「DPG-R-200」

デジタルプロジェクターを搭載した
デジタル円筒プロファイル研削盤「DPG-R-200」

欧・米・中では板金加工技術の
大型見本市が開催

同じ秋口では国内のみならず、欧州・米国・中国でも、板金加工技術に特化した大型見本市が開催されました。

欧州では10月22日から25日までの4日間、ドイツ・ハノーバーで「EuroBLECH 2024」(第27回国際板金加工技術見本市)が開催されました。同展は2年ごとに開催される世界最大級の板金加工技術見本市で、1317社が出展し、114カ国から3万8946人が来場しました。今回で11回目となる「EuroBLECH Award 2024」には、アマダのベンディングロボットシステム「EGB-1303ARse」など6件が選ばれました。

ドイツ・ハノーバーで開催された「EuroBLECH 2024」の会場

ドイツ・ハノーバーで開催された「EuroBLECH 2024」の会場

サーボベンディングロボットシステム「EGB-1303ARse」は「EuroBLECH Award 2024」を受賞した

サーボベンディングロボットシステム「EGB-1303ARse」は
「EuroBLECH Award 2024」を受賞した

米国では10月15日から17日までの3日間、フロリダ州オーランドで「FABTECH 2024」が開催されました。同展は板金加工、金属成形、2次加工、溶接・仕上げ関連の世界最大級の展示会。約7万m2の展示フロアに初出展279社を含む約1500社が出展し、全米と世界70カ国から約3万人の来場者が訪れました。

これまではシカゴとアトランタで交互に開催されてきましたが、米国の製造業においてフロリダ州の存在感が高まっていることから、今回初めてオーランドで開催されました。開催5日前にハリケーンがフロリダ州に上陸し、影響が心配されましたが、出展者数・来場者数とも2021年のアトランタ開催を上まわりました。

中国では9月24日から28日までの5日間、上海で「MWCS 2024」(CNC工作機械・金属加工展)が開催されました。同展は、毎年秋に開催される「中国国際工業博覧会」(CIIF)を構成する9つの専門展のひとつで、中国最大級の鍛圧機械の専門展示会。8万m2超の展示スペースに600社以上が出展し、約20万人が来場しました。

先進国メーカーは先端技術を訴求、
新興国メーカーは機種ラインナップ
を拡大

欧・米・中の各展示会に共通して、主に日欧の先進国メーカーは、レーザ加工機の高度なビーム制御技術と加工技術、ロボット・周辺装置による自動化ソリューション、AI・IoTによるDXソリューション、最新の省エネ技術を採り入れたGXソリューションなどによる付加価値改善・生産性向上を訴求しました。

一方、中国・トルコ・東欧などの新興国メーカーは、パイプ・形鋼に対応する3Dレーザ加工機や複合機、パネルベンダー、ベンディングロボットなどをラインナップに加え、差別化をはかっていました。ただし、金型・周辺装置・ATC・ソフトウエア(ロボットCAMなど)まで含めたトータルソリューションとして提案できる企業はほとんど見られませんでした。

ファイバーレーザ加工機については、これまで新興国メーカーの間で高出力化を競う傾向が見られましたが、数十kW級の水準に達したところでやや落ち着きを見せているようです。一部メーカーが最高出力200kWのファイバーレーザ加工機を出展して注目を集めましたが、全体としては高出力を追求するよりも機種のバリエーションを充実させる方向へと向かっている様子がうかがえました。

ベンディングマシンについてはサーボ化の流れが顕著で、100トン以下はほとんどがサーボベンダーとなっています。また、開催地域を問わず、来場者はベンディングロボットや自動金型交換装置(ATC)などのベンディング自動化ソリューションに対して強い関心を示していました。

アマダは最新レーザマシンと
ベンディング自動化ソリューション
を提案

アマダグループは欧・米・中の各展示会に出展し、最新技術・ソリューションを提案しました。

海外の金属加工業界は日本ほど細分化・専業化しておらず、複数分野に対応する総合金属加工企業が多いのが特徴です。そのためアマダは最新の板金加工マシンと板金全工程の提案に加えて、製造DXソリューション、サーボプレス、微細溶接・マーキング、切削・バンドソーなどを出展し、「金属加工の総合メーカー」としてトータルソリューションの提案力をPRし、注目を集めました。

板金加工マシンについては、「EuroBLECH 2024」と「FABTECH 2024」で新商品のファイバーレーザマシン「REGIUS-3015AJe」(26kW仕様)と、「VENTIS-3015AJe」(9kW仕様)を披露しました。

また、開催地域を問わず、来場者はベンディングロボットシステムや自動金型交換装置(ATC)などのベンディング自動化ソリューションに対して強い関心を示し、世界的に自動化ニーズが高まっている様子がうかがえました。

アマダが「EuroBLECH 2024」で披露したファイバーレーザマシン「VENTIS-3015AJe」(9kW仕様)

アマダが「EuroBLECH 2024」で披露した
ファイバーレーザマシン「VENTIS-3015AJe」(9kW仕様)

「FABTECH 2024」には協働ロボットを搭載したベンディングマシン「HRB-8025+COBOT」(右)などを出展

「FABTECH 2024」には協働ロボットを搭載したベンディングマシン
「HRB-8025+COBOT」(右)などを出展

「MWCS 2024」でベンディング自動化システム「EGB-6013ARce」のプレゼンテーションを熱心に見入る来場者

「MWCS 2024」でベンディング自動化システム
「EGB-6013ARce」のプレゼンテーションを熱心に見入る来場者

2025年7月開催の
「MF-TOKYO 2025」へ向けて

地政学的リスクや金利上昇、インフレなどを背景に、政治・経済の両面で不確実性がますます高まっていますが、大型見本市と出展各社の最新ソリューション提案は、金属加工企業の課題解決と市場の活性化につながります。

2025年7月には鍛圧機械(プレス・板金・フォーミング・自動化・周辺機器)の国際展示会「MF-TOKYO 2025」(第8回プレス・板金・フォーミング展)が東京ビッグサイトで開催されます。鍛圧機械・自動化装置・関連機器・加工技術・サービス技術が一堂に会する展示会で、経営層の方々の視察・商談だけでなく、従業員の方々が気づきや学びを得る貴重な体験としても有意義なイベントになりそうです。

記事:マシニスト出版