2025年
業種別トレンド分析 1
2025年は
下振れリスクを伴いつつも、
主要業種はゆるやかに回復
2025年の経済の見通し
国際通貨基金(IMF)は、2024年10月、世界経済見通しを公表しました(グラフ1)。
IMFの見通しによると、2024年の世界経済の成長率は、前回(2024年7月)と同じ+3.2%と予想しました。
2025年の予想は、前回と同じ+3.2%に据え置きました。IMFは「世界経済の成長は、今後も安定し続けることが見込まれるものの、勢いが欠けそうだ。表面の安定した数字とは裏腹に、2024年4月以降、水面下では大きな変化が見られる」としています。
日本の2024年の成長率は0.4ポイント引き下げ、+0.3%としました。自動車の認証不正問題による一時的な生産停止などが影響しました。2025年は0.1ポイント引き上げ、+1.1%としました。

出典:IMF(2024年10月予測)
内閣府が発表した2024年7-9月期の実質GDP成長率は、前期比0.3%増と小幅の伸びにとどまっています。外需は3四半期連続でマイナスとなりましたが、内需は堅調に増加し、景気はゆるやかな回復を続けています。特に個人消費は、物価高による消費者マインド悪化などマイナス要因があるにもかかわらず、所得の堅調な増加などの影響により順調に拡大しています。設備投資は前期比0.1%減となりましたが、人手不足などを反映した企業の投資意欲は底堅く、一時的な下振れと見られます。
2025年は春の賃上げで5%前後の伸びが見込まれることから、個人消費の動向が景気の先行きを左右すると考えられます。一方で、深刻な人手不足を背景とした民間企業の設備投資は、引き続き堅調に続いていくと考えられます。
また、1月に米国大統領に就任するドナルド・トランプ氏の経済政策もポイントです。すでにカナダ、メキシコからの輸入品に対しては25%、中国には追加で10%の関税をかけることや、新日鉄によるUSスチールの企業買収に反対することなどを表明しており、世界経済への影響は避けられません。
こうしたマクロ経済の状況を踏まえつつ、今年も板金業界の主要な得意先業種のトレンドをまとめました。「半導体製造装置」「データセンター」といった高成長業種が見られるほか、主要業種は下振れリスクを伴いつつも、概ねゆるやかな回復に向かうと考えられます。
工作機械、建設機械、
農業機械、食品機械
1. 工作機械
2024~2025年は横ばいを見込む
日本工作機械工業会がまとめた2024年1~11月の受注実績(11月は速報値)は、前年同期比1.3%減の1兆3420億円となりました。需要全体として底堅さはあるものの、市場の改善が勢いよく進んでいるとは言えない状況です。同工業会は、2024年通年の受注金額を前年比1.1%減の1兆4700億円前後になるとの見通しを示しています(グラフ2)。
2024年の内需は、補助金の効果が薄れていることが響きました。半導体製造装置関連需要は、装置メーカーが慎重に投資時期を見極める動きがあります。その他の業界においては、自動化や省力化を主眼とするシステム案件や、環境対応関連の受注が見受けられます。自動車関連は、数年後のモデルチェンジに関する需要は本格的に動き出しておらず、力強さを欠く展開が続いています。
外需は、北米がアメリカ大統領選挙の本選を控えての慎重姿勢や景気の先行きを見極めようとする警戒感から弱含みに推移しました。欧州はドイツを中心に依然として停滞感が根強いようです。トルコやイギリス、EUの「その他」の地域などで活発な投資が見られるものの、先行きへの慎重な姿勢があります。アジアでは中国が「自動車」などでも好調を維持し、インドも過去最高の受注額に達するなど、アジア全体として好調です。
2025年後半からは米国での受注回復や自動車・半導体関連産業の設備投資プロジェクトが動き出すことが期待され、同工業会は2025年通年の受注金額を前年比8.8%増の1兆6000億円と予想しています。

出典:一般社団法人日本工作機械工業会
2. 建設機械
4年ぶりに減少するものの、
高水準をキープ
日本建設機械工業会が公表している「建設機械需要予測」によると、2024年度の建設機械出荷金額(補給部品含まず)は3兆1610億円(前年度比5%減)で、4年ぶりに減少します(グラフ3)。
2025年度の出荷金額は、3兆2033億円(前年度比1%増)の微増と予測しています。このうち「国内」は公共投資などに支えられて、横ばいで推移するとみられるため、9714億円(同±0%)。「輸出」は「油圧ショベル」「ミニショベル」「基礎機械」などが増加に転じ、ゆるやかに回復するため、2兆2319億円(同2%増)で2年ぶりの増加になると予測しました。
確定している2024年4~10月の出荷金額(補給部品を含まず)の累計は1兆7214億円(国内5269億円、輸出1兆1945億円)となりました。加工最高だった昨年に比べて前年同期比11.1%減となったものの、歴代2位の出荷額にあたる2022年度を上まわるペースで推移しています。
2023年度後半以降、金利の上昇により建設機械向けの設備投資を控える動きが世界的に広がっています。大手建設機械メーカー各社も、2024年度の主要機種の世界需要は前年度比で5~10%減少するとの見方を示しています。中でも、出荷金額の機種別構成比で約40%を占める「油圧ショベル」の需要減が大きく影響しています。

出典:一般社団法人日本建設機械工業会
3. 農業機械
生産台数は減少するが、
大型化・スマート農業に期待
日本農業機械工業会によると、2023年の農業機械の出荷金額は4720億円(前年比5.5%減)となりました。内訳を見ると、国内向けが2437億円(同3.5%増)、輸出向けが1756億円(同17.5%減)、作業機が527億円(同3.9%増)となっています(グラフ4)。
国内の農業機械市場は、新型コロナウイルスの影響で2020年は落ち込みが見られましたが、農業従事者が利用することのできる給付タイプの補助金、無担保融資タイプの支援制度の効果もあって、2020年度後半から上向いてきています。
出荷額のうち、約8割をトラクタ、コンバイン、田植機などの製品が占めていて、稲作を中心とした土地利用型農業に対応した生産体制となっています。農家数の減少と営農化が進んだことに伴い、1経営体あたり経営耕地面積が拡大しています。そのため、国内向けの農業機械の出荷台数は年々減少し、大型化が進んでいます。
農林水産省によると、2023年の基幹的農業従事者(個人経営体)数は約116万人で、2000年の約240万人から半減。平均年齢は68.7歳と働き手不足が深刻化しています。農業従事者の高齢化も進んでいて、機械化農業は避けられなくなっています。これからの農業経営を実現するために、欠かせないのが「スマート農業」です。農業技術とICT技術、5Gなどの高速・大容量の通信技術を活用したハイテク農業として活用が進められていて、農業が抱える問題解決の道として、「スマート農業」の普及に期待が高まっています。

出典:一般社団法人日本農業機械工業会
4. 食品機械
初の6000億円超を達成!
今後もゆるやかな増加が期待
日本食品機械工業会によると、2023年の食品機械の販売額は前年比2.4%増の6045億円と、史上初の6000億円超となりました(グラフ5)。
食品機械のユーザーである食品産業では、インバウンドを含む人流回復に対応した土産物などの食品や外食産業向けなどの業務用食品の需要が増化、コロナ禍の影響で延期していた設備投資計画の再開などが見られました。また、原材料価格の高騰などによる生産コストの増加、深刻化する人手不足に対応するため、小規模な事業者でも省人化・自動化への対応が求められています。そのため、省人化・自動化の動きが加速し、最新の食品機械設備を導入する機運が高まっています。最近の年平均成長率は3.0~5.0%で拡大が続いていて、編集部では2025年は前年比5.0%増の6350億円を見込んでいます。
食品機械メーカーは、従業員が300人以下の中小企業が大半。食品機械のカバー、フレーム、操作盤などの板金加工にまで手が及ばず、その多くが板金加工企業に委託されています。
食の衛生性を担保するため、食品機械メーカーでは設計段階からサニタリー設計を行っています。そのため、使用材料の多くがステンレスで、異物混入を防ぐために機械内部の洗浄を頻繁に行う必要があります。そのため、食品機械には高い洗浄性が求められていて、バリレス加工、鏡面加工、高品質な溶接が欠かせません。

出典:一般社団法人日本食品機械工業会
※本記事はマシニスト出版発行の「Sheetmetal ましん&そふと」2025年1月号とタイアップし、編集したものです。
記事:マシニスト出版