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業界ウォッチ

2025年
業種別トレンド分析 2

冷凍空調機器、包装機械、
医療機器、半導体製造装置

5. 冷凍空調機器

環境配慮需要の増加を受け、
省エネ機器への更新が見込まれる

日本冷凍空調工業会の国内需要統計によると、2024年度の生産台数見通しは「業務用エアコン」が80.5万台、「業務用冷凍冷蔵庫」が22.9万台、「全熱交換器」が12.6万台、「冷凍冷蔵ショーケース(内蔵型)」が13.3万台、「冷凍冷蔵ショーケース」(別置型)が11.3万台などとなっています(グラフ6)。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことを受けて人流やインバウンド需要が増加し、冷凍空調設備への投資も回復傾向が見られた一方、製品の原材料価格の高騰により出荷金額水準が上がることを受けた買い控えの傾向も出てきています。しかし、夏季における近年の気温上昇を受けた需要、燃料費高騰による省エネ機器への更新増、カーボンニュートラルやZEB・ZEHなど環境配慮需要増などもあり、持ち直しの傾向があると見込んでいます。
矢野経済研究所の調査によると、業務用空調設備市場規模は2023~2030年度の年平均成長率が2.3%で推移し、2024年度は前年度比3.4%増の4997億円、2030年度には5668億円まで成長すると予測されています。
業務用空調設備は、省エネ機運の高まりに伴い、製品単価の高い高効率機の販売比率の上昇が期待されるとともに、原材料価格の上昇により製品価格の改定は今後も継続的に実施される見通しで、出荷金額は増加基調での推移が見込まれています。

グラフ6:冷凍空調機器の国内需要推移
グラフ6:冷凍空調機器の国内需要推移

出典:一般社団法人日本冷凍空調工業会

6. 包装機械

国内の個人消費は低調な一方、
インバウンド需要は堅調に推移

日本包装機械工業会によると、2023年度の包装機械および荷造機械工業は、物価高などにより国内の個人消費は低調な一方で、インバウンド需要は堅調に推移しました。輸出については中国の景気減速で中国向けが大幅に減少したものの、米国向けが牽引するかたちで増加しました。部品や原材料の不足などの改善により生産高の回復をみたものの、2023年全体としては伸び悩んだ感がありました。
2023年度の包装機械の生産高は前年度比3.4%増の4350億円と4年ぶりの増加に転じました。個装・内装機械全体が同3.8%増の3667億円、外装・荷造機械全体が同1.2%増の684億円となりました(グラフ7)。
一方で、輸出高は前年度比8.6%減の604億円と3年ぶりに減少しました。地域別ではアジア地域向け・南米地域向けは減少したものの、欧州地域向けは同3.6%増の85億円、北米地域向けは同1.6%増の192億円、アフリカ地域向けは同36.3%増の7.3億円、オセアニア地域向けは同45.7%増の15億円となりました。
2024年度の生産計画は、2023年度比6.6%増の4639億円と、2年連続の増加を予測しています。内訳を見ると、個装・内装機械全体で同5.7%増の3877億円、外装・荷造機械全体は同11.3%増の761億円を見込んでいます。

グラフ7:包装機械の生産高推移
グラフ7:包装機械の生産高推移

出典:一般社団法人日本包装機械工業会

7. 医療機器

2029年までは年平均成長率2.6%で
成長を見込む

みずほ銀行が発表した「日本産業の中期見通し」によると、医療機器の2024年の国内需要は、原材料の価格高騰を受けた一部製品の値上げ実施などにより、前年比5.1%増の4.7兆円を見込んでいます。中期的には高齢化の進展、医療の高度化に伴い、年平均成長率2.6%で成長し2029年に5.3兆円になると予測しました(グラフ8)。
新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う診療報酬上の特例措置や補助金の縮小で、投資は一時的に減少しました。しかし、中期的には全体的にコロナ前の水準に戻り、成長へ向かうと見られます。その理由として、後期高齢者の増加、医療スタッフ不足の深刻化などにより、臨床、病院運営の効率化ニーズが増大。医療機関の運営の効率化や診断支援(AI診断支援ソフトなど)、治療支援(手術支援ロボットなど)のニーズが高まっています。
また、病院の負荷を分散するため、診療所や在宅で使用可能な小型・簡便な医療機器の需要も高まると考えられます。一方で医療現場におけるデジタル技術の活用が広がり、医療ビッグデータの収集・AI分析に強みをもつ異業種企業やスタートアップの医療業界参入が活発化すると考えられます。
厚生労働省によると、2023年度に病気やけがなどの受診で医療機関に支払われた医療費の総額は47.3兆円と、3年連続で過去最高を更新しました。医療機器は2025年以降も右肩上がりで伸びるのは間違いがなさそうです。

グラフ8:医療機器(国内)の出荷高推移
グラフ8:医療機器(国内)の出荷高推移

出典:みずほ銀行・薬事工業生産動態統計調査

8. 半導体製造装置

2026年度までは2ケタ増を見込む

日本半導体製造装置協会は、2024年度の日本製半導体製造装置の販売高は、年度後半からのメモリー投資回復、AI関連半導体の需要押し上げ効果を見込み、前年度比15%増の4兆2522億円と予測しています(グラフ9)。
2025年度は対中強硬路線のトランプ次期米大統領が、中国向けの輸出規制をどこまで行うのかが注目されますが、いずれにしても市場は大きく変動すると見られます。規制が厳しさを増すことになれば、中国企業による日欧米製の製造装置購入が減少することにつながります。また、日系の装置メーカーでは、中国向け輸出が全体の出荷額に占める割合が大きいため、その影響も大きくなります。現状では、DRAM価格の下落など事業環境が悪化するものの、ロジック・ファウンドリー、メモリー全体で堅調な投資が予想されるため、前年度比10%増の4兆6774億円としています。
2026年度もAI関連半導体の需要押し上げ効果が顕在化することから、前年度比10%増の5兆1452億円としていますが、中国需要の動向次第では下振れするリスクは大きく、さらに世界各国で研究開発が行われている2㎚の超高密度な次世代半導体の動向に注意が必要です。日本でも2025年秋には、試作ラインの稼働目指すラピダスが総額5兆円で開発競争に参画しているため、増加傾向と予測されます。

半導体・FPD製造装置(国産分)販売高推移
グラフ9:半導体・FPD製造装置(国産分)販売高推移

出典:一般社団法人日本半導体製造装置協会

※本記事はマシニスト出版発行の「Sheetmetal ましん&そふと」2025年1月号とタイアップし、編集したものです。

記事:マシニスト出版