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業界ウォッチ

2025年
業種別トレンド分析 3

鉄道車両、データセンター、
物流システム機器、昇降機

9. 鉄道車両

2026年度からは更新計画により
増加を見込む

日本鉄道車輌工業会によると、2024年度の国内向け鉄道車両の生産台数は前年度比20.7%減の1023両と予測しました(グラフ10)。このうち、電車の生産は2023年度の1196両から980両に減少すると見ています。
2025年度については、2024年度比12.7%減の893両と予測。新幹線・地下鉄・関東大手民鉄は増加するものの、中部・関西・九州の大手民鉄や中小民鉄Bは横ばいで、JR在来線・中小民鉄A・路面電車は減少するため、電車全体の生産も829両に減少すると見ています。また、2026~2028年度の中期では、JRや東京地下鉄で公表されている車両更新計画もあり、1069両と予測され、増加を見込んでいます。
国内の鉄道事業に関しては成熟期に達していて、鉄道車両の需要は新規よりも更新が中心。長期的には少子高齢化による利用者の減少が見込まれますが、物流危機への対応やGXに伴う鉄道輸送へのモーダルシフト、非電化区間の燃料電池車両・蓄電池車両などの採用も進められています。
輸出向けに関しては、2024年度はパナマ向けの車両などの出荷時期となるため174両。2025年度はパナマ、エジプト、フィリピン向けの車両などで144両と予測。2026~2028年度の中期では、現状の受注状況・受注残、各社の海外事業拡大に向けた取り組み、インフラ輸出に対する政府の支援などを考慮し、年平均120両前後の予測となっています。

グラフ10:鉄道車両の国内需要推移
グラフ10:鉄道車両の国内需要推移

出典:一般社団法人日本鉄道車輌工業会

10. データセンター

2028年までは年平均成長率
13.2%で成長

データセンター(DC)内のスペースと電力を提供する「データセンターサービス」とは、コロケーションサービスやクラウドIaaSサービスなどのことを指します。このうち、「クラウドサービス」と、それを提供するためのDC提供(ホールセールコロケーション)の成長率が高く、市場全体の成長をけん引しています。「クラウドサービス」ではAWS(Amazon Web Services)、Google、MicrosoftなどのハイパースケーラーによるDC拡大が支配的ですが、ハイパースケーラーにDCを提供するためのホールセールコロケーションでは、既存の市場プレイヤーの売上拡大に加えて、市場に新規参入するDC事業者が現れることにより提供業者の数が増えています。
IT専門調査会社IDC Japanによると、この「データセンターサービス」の国内市場は2023年に2兆7361億円となりました(グラフ11)。2023~2028年は年平均成長率13.2%で拡大し、2028年には5兆812億円に達するとしています。
2024年度の生産計画は、2023年度比6.6%増の4639億円と、2年連続の増加を予測しています。内訳を見ると、個装・内装機械全体で同5.7%増の3877億円、外装・荷造機械全体は同11.3%増の761億円を見込んでいます。今後もDXの進展やクラウドサービスの利用増を背景に、その基盤となるデータセンターの市場拡大が見込まれています。行政が推進するデジタルインフラの地方分散化による新設・増床も計画が進んでいます。
ただ、世界的なインフレによりDC運用コストが急上昇おり、DC新設のための建設コストだけでなく、既存DCの設備更新費用、電力コスト、人件費の上昇により、多くのDC事業者で今後も継続的に上昇していくと考えられます。

グラフ11:国内データセンターサービス市場売上額予測
グラフ11:国内データセンターサービス市場売上額予測

出典:IDC Japan

11. 物流システム機器

国内外ともに好調、課題は
「持続可能な物流の構築」

日本ロジスティクスシステム協会によると、2023年度の物流システム機器の総売上金額は前年度比3.1%増の6330億円と、前年度に引き続き6000億円を超え、過去最高水準となりました(グラフ12)。売上件数は前年度比7.2%増の11万8357件。受注金額は約7194億円で、前年度(8463億円)と比べると減少傾向が見られるものの、引き続き高い水準にあります。
同協会は「前年度に引き続き売上件数が増加していることから、半導体不足が解消され、出荷が進みつつあるのではないかと推察される」としています。
「海外向け」の売上金額は前年度よりも増加し、「クリーンルーム向け」は前年度比34.5%の増加となりました。業種別に見ると、「電機・精密機器」の売上比率が依然として高水準となっているほか、「輸送機器・部品」や「卸・小売」の比率が前年度から大きく増加しました。
世界的な原材料や燃料の高騰に加え、日本国内においては「物流の2024年問題」をはじめとした労働力不足、経済状況と景気と懸念事項が多く、今後も注視が必要です。
同協会は「持続可能な物流の構築は、喫緊の課題となっている。また、近年の国や行政における法改正や政策決定等の動向に応じて、産業界に求められる対応も増えるものと想定される。ロジスティクス・物流は、大きな転換期をむかえているといっても過言ではない」としています。

グラフ12:物流システム機器生産出荷総売上金額の推移
グラフ12:物流システム機器生産出荷総売上金額の推移

出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会

12. 昇降機

新設台数は2年連続で増加、保守ビジネスに注目が必要

日本エレベーター協会によると、2023年度の昇降機の新設台数は前年度比1.7%増の2万5620台となりました(グラフ13)。
経済産業省の生産動態統計では、2023年のエレベーター(自動車用を除く)の生産金額は同11.5%増の2258億円、エスカレーターは同8.5%増の236億円となりました。コロナ禍による建設工事と新規受注の停滞などにより、2020~2021年度は2年連続で減少しましたが、2023年は前年に引き続き増加となりました。
昇降機の新設台数は、建設投資との相関関係にあるため、都市再開発に伴うオフィスビルや商業施設、集合住宅などの建設工事が好調により、昇降機の新設は2024~2025年度も堅調に推移すると見られます。また、公共施設や鉄道駅のバリアフリー化へ向けた需要も増加が見込まれます。
エレベーターは設置後20~25年で大規模改修・更新が必要とされるため、エレベーターの調整や消耗品の交換などを行う「保守ビジネス」市場の拡大に伴い、保守・管理サービスだけを専門で行う独立系企業にも影響しそうです。
エレベーター業界では、エレベーターの設置や保守・点検作業には技術が必要であることに加え、技術力を身につけるには時間がかかります。また、エレベーターの設備更新が増えているだけに、急増するニーズに対応するため、人材の確保と育成が課題となっています。

グラフ13:昇降機の新設・保守台数の推移
グラフ13:昇降機の新設・保守台数の推移

出典:一般社団法人日本エレベーター協会

※本記事はマシニスト出版発行の「Sheetmetal ましん&そふと」2025年1月号とタイアップし、編集したものです。

記事:マシニスト出版