Vol.1 「新事業進出・ものづくり補助金」が新設
チャレンジ企業を応援!
既存技術を生かして新市場へ
近年、板金業界の技術水準が高まる中で、「この技術があれば別の業界のニーズにも応えられるのではないか」と感じる経営者が増えています。こうした中小企業の新分野への挑戦を後押しする制度として、2026年度から「新事業進出・ものづくり補助金(新事業進出枠)」が実施されています。
「新事業進出・ものづくり補助金」とは?
制度の概要と特徴
本補助金は、コロナ禍の支援を目的に設けられた「事業再構築補助金」の実質的な後継である「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合・再編※されたものです。これにより、中小企業の売上拡大や生産性向上を一体的に支援する制度へと転換されました。
申請枠の一つである「新事業進出枠」は、新製品・新サービスを新たな顧客層へと提供する取り組みが補助対象です。つまり、「製品」と「顧客」の双方で新規性が求められる点が大きな特徴です。
補助率は1/2、補助上限額は従業員規模等に応じて2500万〜9000万円となっている大型の補助金です(表1)。2026年6月頃から第1回公募が始まり、2026年度末までに複数回の公募が実施される見込みです。また、新制度の要件については、前身である「新事業進出補助金」の基本要件・賃上げ要件がベース(表2)になると予想されます。
※当補助金は、既存の「ものづくり補助金」とは別の新設補助金です。
| 型・類型 | 従業員規模 | 補助上限金額(賃上げ特例) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 新事業進出率/ グローバル枠 |
20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 1/2 ※賃上げ特例:2/3 |
| 21〜50人 | 4,000万円(5,000万円) | ||
| 51〜100人 | 5,500万円(7,000万円) | 2/3 | |
| 101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
| 要件区分 | 内容 |
|---|---|
| 主な基本要件 | 補助事業終了後3〜5年で、付加価値額の年平均成長率を4.0%以上増加させる事業計画を策定すること |
| 補助事業終了後3〜5年で、1人あたり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させる事業計画を策定すること | |
| 補助事業終了後3〜5年の間、事業場内最低賃金が、毎年、都道府県別最低賃金より30円以上高い水準となる事業計画を策定すること | |
| 賃上げ要件 | 補助事業終了後3〜5年で、1人あたり給与支給総額の年平均成長率を6%以上増加させる事業計画を策定する |
| 補助事業終了後3〜5年の間、事業場内最低賃金が、毎年、都道府県別最低賃金より50円以上高い水準となる事業計画を策定する |
板金業界での採択事例と、評価されたポイント
実際の採択事例として、船舶向けの空調設備(ダクト等)を一貫して手がけていた金属製品加工業者を紹介します。同社は得意先からの打診をきっかけに、産業用冷凍機部品の製造・組立という新市場への進出を決断しました 。申請は、自社の強みである「高い溶接技術」を生かしつつ、ボトルネックだった「切断工程の刷新」を目的とした設備投資計画を策定し、見事に採択されています。
本件が評価されたポイントは、大きく次の2つです。
- 技術力の応用:ゼロから全く新しい事業を始めるのではなく、蓄積してきた板金加工のノウハウや高度な溶接技術を基盤とした計画であった点。
- ターゲットの明確さ:顧客企業やその先のエンドユーザーまで具体的に想定し、既存事業との違いや参入の必然性を論理的に説明できた点。
このように、単に新しいことに取り組むのではなく、自社の強みをどう生かし、なぜその市場へ参入するのかを論理的に説明することが重要です。
新事業進出で攻めの経営へ
ハードルが高く見える「新事業進出」ですが、既存事業で培ってきた技術やノウハウを応用すれば、決して特別なことではありません。 むしろ、人口減少や市場縮小が進む中、潜在的な顧客ニーズを捉えて新たな収益の柱を構築することは、持続的成長に向けた重要な一手となります。
まずは自社の強みを整理し、その優位性を起点に新たな設備投資や事業機会の提案を進めてはいかがでしょうか。



