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板金加工の基礎講座

第11回
ベンディング(曲げ)加工 (Part 2)

7-8.曲げ圧力の計算方法

板材を曲げ加工するときに必要な加圧力を計算する方法は2通りあります。

  • 加圧力の計算式:算出式により求める方法
  • 圧力表    :経験値に基づく簡便表により求める方法
1. V曲げ加圧力の計算式

エアベンディングの曲げ加圧力の計算式を記します。

エアベンディングの曲げ加圧力の計算式

P : V曲げに必要な加圧力(kN)

C : 補正係数

L : 曲げ長さ(m)

t : 板厚(mm)

σ : 材料の引張応力(N/mm2

V : Vダイの幅(mm)

※補正係数CはダイのV幅によって異なる係数で一般的には1.33とします。

V曲げ加圧力の計算式

この式より以下の4つのことが分かります。

  1. 曲げ圧力は曲げ線の長さに比例する。
  2. 曲げ圧力は板厚の2乗に比例する。
  3. 曲げ圧力は材料の引張り強さに比例する。
  4. 曲げ圧力はVダイの幅に反比例する。
2. 曲げ圧力表  一般軟鋼板(引っ張り強さ:450~500N/mm2
圧力表の見方

※SUS(引っ張り強さ:520~600N/mm2)の曲げ圧力表はこちら 「圧力表の見方」

【曲げ圧力を計算してみましょう!】※答えは最下部にあります
  1. SS400 t1.2をV8で曲げる時に必要な加圧力は何kN/mか?
    (SS400の引張応力は450N/mm2とする)
  2. SS400 t2.3をV14で曲げる時に必要な加圧力は何kN/mか?
  3. SS400 t3.2をV25で曲げる時に必要な加圧力は何kN/mか?
  4. SS400 t1.6、曲げ長さ2mをV10で曲げる時に必要な加圧力は何kNか?
  5. SS400 t1.6をV8で曲げる時に必要な加圧力は何kN/mか?
  6. SUS304 t2.0をV12で曲げる時に必要な加圧力は何kN/mか?
    (SUS304の引張応力は450N/mm2とする)

7-9. 作業のポイントと留意点

1. V幅は板厚に準じて

板厚によりダイの溝巾(V幅)を決めます。最も多く使用されているボトミング(板金基礎講座10 7-3. 曲げ加工の種類を参照)のV幅の適正値は、下表の通りです。

板厚 t 0.5~2.6 3.0~8 9~10 12t以上
V幅 6t 8t 10t 12t
2. 金型取り付け、取り外しは手順通りに

パンチの取り付け・取り外しは、手の指の挟まれ防止のため、上下のテーブルを閉じて、パンチとダイのすき間を6mm以下にしてから行います。

3. 金型の間には絶対に手を入れない

板厚2mm、幅100mmの軟鋼板を曲げる際に、金型が閉じる力は2ton(20kN)以上にもなります。
パンチとダイの間には、絶対に手を入れてはいけません。
加工中はもちろんのこと金型の取り付け、取り外し、点検の際も金型間には手を入れないでください。

危険!手を入れない!

危険! 手を入れない!

4. 曲げ始めたらワークから手を放す

写真のような小さなワークを曲げるときは、折り曲げが始まったら、必ずワークから手を放す習慣をつけることが大切です。
手を放さずワークを保持したままでいると、金型とワークに手を挟まれ大変危険です。

曲げが始まったら手を離す!

曲げが始まったら手を離す!

5. 加圧リミットを守ろう

金型には、耐圧が刻印されています。必ず耐圧以下で使用しなければなりません。
注)刻印された耐圧表示は、1000mm当たりの圧力です。
曲げ長さが500mmの場合、耐圧は表示圧力の1/2となります。

7-10. 曲げ金型

1. 曲げ加工の精度

曲げ加工の精度は基本的に繰り返し精度を指します。

フランジ精度

フランジ精度

角度精度

角度精度

通り精度

通り精度

2. 最小フランジ寸法

曲げ加工が終わった時点でも、材料はダイの両肩に乗っている必要があります。
最小フランジ寸法を求めるにはダイの斜辺の長さとイコールになります。

(V/2)× root2 ≒ 0.7 V
最小フランジ寸法

例:ダイV幅=10mmでは最小フランジ寸法は7mmとなります。

3. 折り曲げ時の穴変形

穴加工された穴の縁と折り曲げの間隔が狭いと、穴の周囲の肉が引っ張られるため、穴の外側が膨らみ、穴が変形してしまいます。

対策:① 曲げ加工後に穴をあける  →  非生産的
② 間隔を適正にあける    →  一般的
③ 穴と曲げ部の間にスリットを入れる →  設計変更による対応

穴の縁と曲げ部までの最短間隔(下図 S1)をとります。

S1 =(V/2)× root2 ≒ 0.7 V

スリット加工による変形防止

4. ダイの肩キズ

V金型(ダイ)による“曲げキズ”が発生するので、キズを嫌う製品は金型や保護シートなどで対策をとる必要があります。

ダイの肩キズ
肩キズ対策商品(抜粋)

肩キズ対策商品(抜粋)

※「WING BEND」は東京精密発條株式会社の登録商標です。

肩キズ対策商品の情報はこちら 「肩キズ対策商品」

【曲げ圧力計算問題の答え】
  1. SS400 t1.2 V8   答え 120kN/m
  2. SS400 t2.3 V14   答え 250kN/m
  3. SS400 t3.2 V25   答え 270kN/m
  4. SS400 t1.6 V10 曲げ長さ2m   答え 340kN
    圧力表より曲げ長さ1mの圧力は170kNなので、170X2=340kN
  5. SS400 t1.6 V8   答え 220kN/m
    圧力表よりV10の時の圧力は170kN
    曲げ圧力はV幅に比例するので170X10/8≒220kN/m
  6. SUS304 t2.0 V12   答え 300kN/m
    圧力表よりSS400 t2.0 V12の時の圧力は220kN
    曲げ圧力は引張応力に比例するので220X600/450≒300